
- 変形労働時間制の労使協定書(1ヶ月単位・1年単位の2種類)をWord・PDFで無料ダウンロードできる
- 協定の締結だけでは足りず、所轄労働基準監督署長への届出(様式第三号の二/様式第四号)が必要なこと
- 1ヶ月単位と1年単位で異なる要件(1年単位のみ必須の年間労働日数280日等の限度基準)
- 限度基準を自動判定するエクセルチェック表の使い方
- 協定書の別紙(1ヶ月単位の勤務割表・1年単位の年間カレンダーと区分表)をエクセルで作る方法
変形労働時間制とは
変形労働時間制は、一定の期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間(40時間)を超えなければ、特定の週や特定の日に法定労働時間を超えて労働させても、その部分を時間外労働として扱わなくてよいとする制度です。月末や決算期、季節によって業務量に波がある会社が、繁忙期に労働時間を長く、閑散期に短く配分することで、実態に合った働き方を実現できます。
変形労働時間制を採用しても、あらかじめ定めた労働時間を超えて働かせた場合や、対象期間を平均して週40時間を超えた場合には、通常どおり割増賃金の支払いが必要です。「残業代を払わなくてよくなる制度」という誤解は禁物です。
1ヶ月単位と1年単位、まず何が違うか
| 比較項目 | 1ヶ月単位(労基法32条の2) | 1年単位(労基法32条の4) |
|---|---|---|
| 定め方 | 労使協定 または 就業規則その他これに準ずるもの | 労使協定のみ(就業規則単独では不可) |
| 対象期間 | 1箇月以内 | 1箇月を超え1年以内 |
| 年間労働日数の上限 | 特に定めなし | 対象期間3箇月超の場合、年280日 |
| 1日・1週の労働時間の上限 | 特に定めなし | 1日10時間・1週52時間 |
| 連続労働日数の上限 | 特に定めなし | 原則6日(特定期間は「1週間に1日の休日が確保できる日数」。条文に数字はなく、計算上は最長12日) |
| 届出(協定で定めた場合) | 様式第三号の二 | 様式第四号 |
月内・週内の繁閑だけに対応したいなら1ヶ月単位、季節や年間行事に応じた繁閑まで対応したいなら1年単位、というのが選び方の目安です。
1ヶ月単位の変形労働時間制(労基法32条の2)
労働基準法第32条の2第1項 は、労使協定または「就業規則その他これに準ずるもの」により、1箇月以内の一定期間を平均し週40時間を超えない定めをしたときは、特定された週・日において法定労働時間を超えて労働させることができるとしています。
ポイントは、就業規則だけでも定められるという点です。常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則にこの定めを置いて労基署へ届け出れば、それで足ります。一方、労使協定(本テンプレートのような書面協定)で定めた場合は、就業規則の届出とは別に、協定そのものを届け出る義務が生じます(同条2項)。届出は 労働基準法施行規則第12条の2の2第2項 により、様式第三号の二で所轄労働基準監督署長に対して行います。
協定書の第4条で「別紙勤務割表のとおり」とする勤務割表は、同じページで配るエクセル「勤務割表(1箇月単位)」で作れます。起算日を入れ、日ごとに労働日か休日か、始業・終業の時刻と休憩を入れると、1日の労働時間、週ごとの合計、対象期間の合計が出て、対象期間を平均して週40時間以内か(上限は40時間×対象期間の暦日数÷7)を判定します。記入例のシートつきです。勤務割表を何日前までに労働者に知らせるかは、1箇月単位の条文(第32条の2)に日数の定めがないので、協定書の( 日前)に会社が決めた日数を書いてください。
1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)
労働基準法第32条の4第1項 は、必ず労働者の過半数代表者等との書面による協定によって定めるものと規定しており、就業規則のみでの代替は認められていません。協定で定める事項は5つです(同項第1号〜第5号)。対象労働者の範囲、対象期間(1箇月を超え1年以内)、特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間)、対象期間における労働日及び労働日ごとの労働時間、その他厚生労働省令で定める事項で、最後の1つは施行規則第12条の4第1項により有効期間の定めです。
1年単位だけに課される限度基準
1年単位は、長期にわたり労働時間を偏らせられる制度であるため、 労働基準法施行規則第12条の4 が次の追加の限度基準を定めています。
| 限度基準 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 年間労働日数 | 対象期間が3箇月を超える場合、1年当たり280日以内 | 施行規則12条の4第3項 |
| 1日・1週間の労働時間 | 1日10時間、1週間52時間以内 | 施行規則12条の4第4項 |
| 週48時間超の週の連続 | 対象期間3箇月超の場合、週48時間を超える週が連続3週以下 | 施行規則12条の4第4項第1号 |
| 3箇月ごとの区分での週48時間超 | 対象期間3箇月超の場合、初日から3箇月ごとに区分した各期間で、週48時間を超える週の初日の数が3以下 | 施行規則12条の4第4項第2号 |
| 連続労働日数 | 原則6日以内。特定期間は「1週間に1日の休日が確保できる日数」(条文に数字はなく、休日の置き方からの計算上は最長12日) | 施行規則12条の4第5項 |
締結した協定は、 労働基準法施行規則第12条の4第6項 により、様式第四号で所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。1年単位は就業規則のみでの代替ができないため、事業場の規模にかかわらず必ずこの届出が必要です。
協定書の第4条で「別紙年間カレンダー」「別紙区分表」とする別紙は、同じページで配るエクセル「年間カレンダー・区分表(1年単位)」で作れます。対象期間の開始日を入れ、日ごとに労働日か休日かと始業・終業の時刻・休憩を入れると、月ごとの労働日数と総労働時間(区分表)が出て、280日、平均週40時間、1日10時間、1週52時間、週48時間超、連続労働日数を判定します。週は対象期間の開始日から7日ごとに数えるので、就業規則などで週の起算日を決めている会社はその区切りで確かめてください。記入例のシートつきです。
従業員数による違い
| 事業場の規模 | 1ヶ月単位(就業規則で定めた場合) | 1ヶ月単位(労使協定で定めた場合) | 1年単位 |
|---|---|---|---|
| 常時10人未満 | 就業規則の届出義務なし(周知で足りる) | 様式第三号の二の届出が必要 | 様式第四号の届出が必要 |
| 常時10人以上 | 就業規則の届出が必要 | 就業規則の届出+様式第三号の二の届出が必要 | 様式第四号の届出が必要 |
常時10人未満の事業場のうち、物品の販売・保管・賃貸や理容、映画の映写や演劇などの興行、保健衛生、旅館・飲食店・娯楽場などの事業(労働基準法別表第一の第8号・第10号・第13号・第14号。映画の製作の事業を除く)には、施行規則第25条の2による週44時間の特例があります。1箇月単位の変形労働時間制は「1週間当たり44時間を超えない定め」でよいとされています(同条第2項)。1年単位にはこの特例は適用されず、週40時間です(同条第4項)。
届出を怠るとどうなるか
届出義務違反は労働基準法違反にあたり、労働基準監督署の是正勧告の対象になるほか、罰則(30万円以下の罰金、労基法120条)の対象にもなり得ます。1年単位の協定の届出も、労基法32条の4第4項が32条の2第2項を準用しているため、同じ罰則の対象です。届出をしなかった場合に変形労働時間制の効力がどうなるかは、条文には書かれていないので、このページでは断定しません。気になる場合は所轄の労働基準監督署か社会保険労務士にご確認ください。協定を締結したら、速やかに届け出る運用を徹底してください。
エクセルチェック表の使い方(1年単位専用)
本テンプレートに同梱のエクセル「限度基準チェック表」は、対象期間の開始日と終了日、月別の労働日数、月別の総所定労働時間を入力すると、対象期間が3箇月を超えるかどうかを自動で判別します。そのうえで、労働日数が280日以内か、総所定労働時間が上限(40時間×対象期間の暦日数÷7)以内か、つまり対象期間を平均して週40時間以内かを判定します。あわせて1日・1週間の最長労働時間、週48時間を超える週の連続、3箇月ごとの区分での週の数、連続労働日数(通常期間・特定期間)を入力すると、施行規則12条の4の基準に照らして「範囲内」「超過」を自動表示します。特定期間の連続労働日数は、条文が「1週間に1日の休日が確保できる日数」としか書いていないため、計算上の12日を目安に判定します。対象期間が1年未満のときの280日の数え方は条文に書かれていないので、「要確認」と表示します。あくまでセルフチェック用の簡易ツールですので、最終的な適合可否は所轄の労働基準監督署や社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
1ヶ月単位と1年単位、どちらを選べばよいですか?
変形労働時間制を採用すれば残業代を払わなくてよくなりますか?
労使協定を締結しても、労基署に届け出なければ効力は発生しませんか?
従業員10人未満の会社でも届出は必要ですか?
協定の有効期間中に対象労働者や勤務パターンを変更したい場合はどうすればよいですか?
参考文献・出典
本ページの内容は以下の公的情報源に基づき作成しています(2026-10-12 確認時点)。
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