労働・HR

IT エンジニア雇用契約書

ITエンジニア向け雇用契約書(正社員)テンプレートを無料DL。著作権の帰属・職務発明(特許法35条)・秘密保持・OSS・競業避止・副業・裁量労働制・ストックオプションの条項入り。2024年4月改正の「業務の変更の範囲」の欄入り。

公開: 2026年5月12日 最終更新: 2026年10月12日 Word 会員登録不要・無料
2026年10月12日 時点の情報
著作権法15条(職務著作)e-Gov法令検索
全て無料・会員登録不要・即ダウンロード

テンプレート(空欄・編集可能)

200種類のテンプレートを掲載中
1形式(Word)でダウンロードできます
自社サーバーから直接配信(中継広告ページ非経由)
会員登録・メールアドレス入力不要

ダウンロード後は念のため、お使いのセキュリティソフトでのご確認をおすすめします。

IT業界向け雇用契約書テンプレートのプレビュー
著作権・職務発明・裁量労働制・OSS利用 等IT特有の条項を収録

IT業界における雇用契約書の5特殊条項

ITエンジニアの雇用契約書では、一般的な雇用契約書に加えて、次の5つの内容を決めておくと、著作権や職務発明の帰属、競業避止の有効性、裁量労働制の適用をめぐる争いを減らせます。このテンプレートでは、著作権・職務発明を第14条・第15条、秘密保持を第16条、OSSを第20条、競業避止を第21条、副業を第22条、在宅勤務を第19条、裁量労働制を第6条に入れています。裁量労働制は、本人の同意と同意の撤回の手続まで定めています。

条項 根拠法令 リスク(欠落時)
著作権譲渡・職務発明規程 著作権法15条・特許法35条 コード・発明の帰属が曖昧になり訴訟リスク
秘密保持・OSS利用ポリシー 不正競争防止法2条6項 GPLコード混入・営業秘密漏洩で刑事責任
競業避止義務(代償措置付き) 民法90条・憲法22条 代償なし・期間過長だと、条項が無効と判断されるおそれ
副業・OSS貢献ポリシー 厚労省副業ガイドライン2022 無断副業・競合OSS活動をめぐるトラブル
リモートワーク・裁量労働制 労基法38条の3(2024年改正) 本人の同意を得ていないと、制度の要件を欠く(労基則24条の2の2第3項1号)

著作権譲渡・職務発明規程

業務で作成したコード・設計書・データモデルは、 著作権法15条(職務著作) の要件を満たせば著作権が最初から会社に帰属します。プログラムの著作物は、会社の発意に基づき、業務に従事する人が職務上作成したもので、作成の時の契約や勤務規則に別段の定めがなければ、会社が著作者になります(同条2項。公表名義の要件は、プログラムを除く1項の著作物にだけあります)。ただし「業務時間外・個人PCで作成したが業務と関連するコード」のような境界ケースでは帰属が争われます。

職務発明については 特許法35条 により、契約、勤務規則その他の定めで、あらかじめ会社に特許を受ける権利を取得させると定めておけば、その権利は発明が生まれた時から会社に帰属します(3項)。従業者は「相当の利益」を受ける権利を持ち(4項)、その定めは、基準づくりでの協議、基準の開示、意見の聴取の状況などから見て不合理と認められるものであってはなりません(5項)。定めがない、または不合理と認められるときは、利益の内容は同条7項の事情で決まります。相当の利益の基準は、採用時に示せる形で別の規程に定めておきます。

  • 業務著作物(コード・設計書・ドキュメント)→ 会社帰属を明示
  • 職務発明 → 会社への帰属 + 相当の利益の基準を別の規程(このテンプレートの第14条2項「職務発明取扱規程」)に記載
  • 業務外の個人著作物 → 個人帰属(業務利用時はライセンス許諾or譲渡の手続きを明記)
  • 入社前成果物(ポートフォリオ等)→ 帰属変更なし・返却ポリシーを明記

秘密保持・OSS利用

エンジニアが扱う技術情報(ソースコード・アーキテクチャ設計・顧客データ・インフラ構成)は 不正競争防止法2条6項 の営業秘密に該当します。保護には①秘密管理性(アクセス制御・表示)、②有用性、③非公知性の3要件が必要です。

OSS利用については、GPLv3は、コピーを手にした人に対して作品全体をこのライセンスで許諾することを求めます(5条c)。社内のコードにGPLのコードを組み込んで渡すと、この条件が及ぶことがあります。このテンプレートの第20条は、OSSを業務に使うときにライセンスを事前に確認すること、GPL・AGPL等のコピーレフト型は事前に承認を得ること、業務コードをOSSとして公開するときは事前申請・承認制とすることを定めています。許可するライセンスの一覧や確認の手順まで決めたい会社は、別に社内のOSSポリシーを作って添付してください。

競業避止義務

競業避止条項が有効かどうかは、裁判所が次の事情を総合して判断します:

  1. 保護すべき正当な利益: 技術ノウハウ・顧客情報・採用情報等の具体的利益を明示
  2. 労働者の地位: 管理職・コアエンジニアに限定(全社員一律は過広)
  3. 地域・期間・職種の限定: 期間は短く、対象は競合企業を具体的に特定し、技術領域では区切らない
  4. 代償措置: 退職金上乗せ・在職中の特別手当・専任手当等を明記

代償措置がないことは、無効と判断される方向に働く事情の一つです。このテンプレートの第21条は、在職中の競業禁止、退職後1年間の主要顧客(在職中に担当した顧客)への直接営業・スカウト・引抜きの禁止、その対価(退職金への加算または別途の支払い)を定めています。転職先を競合企業に限って禁じる条項は入れていません。東京地裁平成24年1月13日判決(退職金請求事件)は、転職禁止期間を2年間とすることは期間の長さとして相当とは言い難く、地域の限定がない点も適切でなく、代償措置も十分とは言い難いと判断し、競業避止条項を前提とした退職金の不支給を認めませんでした(裁判所 裁判例検索)。

副業・OSS貢献

厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の考え方を踏まえ、このテンプレートの第22条は届出制にしています。乙は他社での就業や事業を行うとき事前に書面(電子メールを含む)で届け出て、会社は、労務提供上の支障、営業秘密の漏洩、会社の信用を損なう場合、競業により会社の利益を害する場合を除き、届出のあった副業・兼業を認めます。IT業界のエンジニアはOSS貢献・技術ブログ・登壇・個人開発が日常的なので、どこまでを届出の対象にするかを、あらかじめ決めておきます。

  • OSS貢献(無報酬)→ 届出推奨・競合OSS(競合プロダクトのコア部分)は事前承認要
  • 技術ブログ・登壇 → 原則許可・機密情報掲載禁止・事前確認フロー
  • フリーランス受注 → 競合他社案件は届出必須・労働時間通算(労基法38条1項)の管理
  • GitHub Sponsors・バウンティ → 報酬あり副業として届出対象

リモートワーク・裁量労働

専門業務型裁量労働制では、労基法38条の3第1項6号に基づく労働基準法施行規則24条の2の2第3項が、本人の同意を得ること、同意しなかった労働者に解雇その他の不利益な取扱いをしないこと、同意の撤回の手続を定めることなどを、労使協定の定めるべき事項にしています(2024年4月から適用されます)。対象は同条2項2号の「情報処理システムの分析又は設計の業務」で、このテンプレートの第6条3項は、第3条の業務のうち分析又は設計の業務に限っています。以下の内容を、協定と契約書で定めます。

  • 労使協定の締結(対象業務・みなし労働時間・健康・福祉確保措置・苦情処理措置)
  • 本人の同意(省令は書面を要件としていません。このテンプレートの第6条4項は書面で取る形にしています)
  • 同意しない場合も不利益取扱いしない旨の明示(第6条4項)
  • 同意撤回の申出先・撤回後の労働時間制度(通常の労働時間制への復帰)の明記(第6条5項)
  • 協定の有効期間の定めと、労働者ごとの記録(労働時間の状況・健康福祉確保措置・苦情処理措置・同意とその撤回)を有効期間中と満了後5年間保存すること(第6条6項。省令24条の2の2第3項3号・4号)
  • 所轄の労働基準監督署長への届出(様式第13号。同条4項)

リモートワーク中の費用負担(通信費・光熱費)・労働時間管理方法(PC打刻・Slack報告等)・中抜け時間の取扱いも雇用契約書に明記します。

IT雇用契約書の必須記載10項目

一般の雇用契約書に必要な労働条件(労基法施行規則5条)に加えて、このテンプレートがIT業界向けに定めている10項目です(法令が求める項目の一覧ではありません)。

  1. 著作権帰属(職務著作の明示): 業務上作成したソフトウェア・ドキュメント・データベースの著作権は会社に帰属する旨(著作権法15条)
  2. 職務発明・相当の利益: 業務上の発明の特許権は会社に帰属し、相当の利益の算定方法を別紙規程で定める旨(特許法35条)
  3. 秘密保持対象の範囲: ソースコード・設計書・APIキー・インフラ構成・顧客データを営業秘密として指定(不正競争防止法2条6項)
  4. OSSライセンス遵守義務: 業務でOSSを使う前のライセンス確認・コピーレフト型の事前承認・OSS公開の事前申請(第20条)
  5. 競業避止条項(代償措置付き): 在職中の競業禁止、退職後1年間の主要顧客への営業・引抜きの禁止、その対価(第21条)
  6. 裁量労働制の本人同意: みなし労働時間・対象業務・同意撤回手続きを明示(第6条)
  7. 副業・OSS活動の届出制度: 届出先・承認基準・競合他社案件の禁止範囲を明示
  8. リモートワーク条件: 就業場所(在宅可)・通信費負担・機材貸与の有無・セキュリティ要件
  9. ストックオプション条項: ストックオプション・RSUを付与する場合は別途付与契約による旨(第12条3項)
  10. 退職時引継ぎ・アクセス権限返却: 引継ぎは退職日までに誠実に行い、貸与物を返還する(第25条2項・3項)。アカウント削除の期限は、必要なら退職条項に足してください(このテンプレートには入れていません)

SES契約との違い(雇用契約 vs 業務委託)

SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、一般には準委任契約(民法656条)の形で結ばれ、雇用契約とは性質が異なります。ただし、契約の題名でなく働き方の実態で判断されます。次の表は、雇用契約と、個人に業務委託する場合の一般的な違いです。

項目 雇用契約(正社員) 個人に業務委託する場合(準委任など)
指揮命令 会社(雇用主)が指揮命令 受託者が進め方を決める。発注者が労働者のように指揮命令すると、雇用や労働者派遣と判断されることがある
労働法の適用 労基法・労契法・健保・厚年が適用される 一般には適用されない(実態が労働者なら適用される)
報酬 月給・時給(賃金) 業務委託料(請求書払い)
残業代 労基法に基づき支払義務 一般には残業代の仕組みはない(報酬は契約で決める。実態が労働者なら支払義務が生じる)
社会保険 健保・厚年・雇保に加入義務 一般には自分で国保・国民年金に加入(実態が労働者なら会社の加入が必要)
著作権 職務著作で会社帰属(著作権法15条) 契約で譲渡を定めない限り受託者に残る。翻案権等(27条・28条)は特掲しないと譲渡した側に留保されたと推定される(61条2項)
偽装請負リスク なし 請負・準委任の名目でも、クライアントが直接指揮命令していれば労働者派遣にあたるおそれ

SES契約でクライアントが直接作業指示・勤怠管理を行う「偽装請負」は、受託側と発注側で根拠の条文が別です。受託側は、許可を受けずに労働者派遣事業を行った者として刑事罰(労働者派遣法59条2号:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)の対象になります。発注側は、派遣元事業主以外から労働者派遣の役務の提供を受けることが禁じられており(24条の2)、違反すると勧告・公表(49条の2)の対象になります。GitHub上の権限管理・Slackチャンネル・スプリント計画の主体者が誰かも判断材料になります。

ストックオプション付与条件

スタートアップ・上場準備企業では、ストックオプション(SO)が採用競争力の核心です。雇用契約書本文は概要のみ記載し、詳細は別紙SO契約書で定めます。

雇用契約書本文への記載例

「会社は、取締役会決議および所定の手続きを条件として、甲に対してストックオプションを付与することがある。付与条件・数量・権利行使価格・ベスティング条件は別紙ストックオプション契約書による。」

別紙SO契約書の必須事項

  • 付与株数・権利行使価格: 税制適格にするには、一株当たりの権利行使価額が、契約を締結した時の一株当たりの価額に相当する金額以上であること(措法29条の2第1項3号)
  • ベスティング: 権利行使できる株数が、時間とともに増える決め方(例: 4年・1年クリフ)
  • 権利行使期間: 税制適格SOは、付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日まで(一定の会社は15年)(同項1号)
  • 退職時の取扱い: Good Leaver(ベスト済分の行使権を保持)vs Bad Leaver(懲戒解雇等でSO消滅)
  • 税制適格要件(措法29条の2第1項の一部): 権利行使価額の年間合計1,200万円以下(設立後5年未満の会社は価額を2で、5年以上20年未満で財務省令の要件を満たす会社は3で割って判定)・一株の権利行使価額≧契約時の一株の価額・譲渡の禁止・行使期間。ほかにも要件があります
  • IPO前後の行使制限: 主幹事証券・取引所の要請によるロックアップ期間
項目 税制適格SO(措法29条の2) 非適格SO
課税タイミング 行使時に所得税を課さない(措法29条の2第1項) 要件を満たさないと、この扱いは受けられない
税率 売却したときの税率は国税庁のページで確認してください(このページでは確認していません) 行使時の課税は、国税庁のページで確認してください(同上)
年間行使上限 権利行使価額の年間合計1,200万円(会社の設立後の期間により、2で割る・3で割る計算がある) なし
要件 権利行使価額≧契約時の一株の価額・譲渡の禁止・行使期間(付与決議の日後2年経過〜10年経過) 特になし

退職時のソースコード・データ取扱

ITエンジニアの退職時に起きやすいトラブルが、ソースコード・設計書・顧客データの持ち出しと、アクセス権限の残置です。雇用契約書に明記することで、退職時のトラブルを予防できます。

禁止行為(雇用契約書への明記事項)

  • 退職前後を問わず、業務で作成・アクセスしたコード・データの社外への持ち出し禁止
  • 個人GitHubへのfork・clone・push禁止(業務リポジトリの内容)
  • 退職後の会社システム(AWS・Cloudflare・GitHub Organization等)への無断アクセス禁止
  • 顧客情報・ユーザーデータのローカル保存・外部送信禁止

引継ぎ義務チェックリスト(契約書添付を推奨)

  • GitHubのOrganizationオーナーシップ・リポジトリ権限の後任への移転
  • AWS IAMユーザー・ロール・アクセスキーの削除
  • Cloudflare・Vercel・Netlify等のアカウント権限の移転
  • Slack・Notion・Confluenceのアクティブセッション削除
  • SSH公開鍵の削除(サーバー・GitHub・各種SaaS)
  • APIキー・OAuthトークンの失効処理
  • ランブック・Architecture Decision Record(ADR)の最終更新

退職日から○営業日以内に上記を完了する義務と、完了報告書の提出義務を雇用契約書の退職条項に盛り込む方法もあります。このテンプレートの第25条2項は、引継ぎを退職日までに誠実に行うことを定めるにとどまり、営業日の期限や完了報告書は入れていません。引継ぎ未完了を理由に退職金を一方的に減らすことは、退職金が賃金にあたる場合は全額払いの原則(労基法24条1項)に反するおそれがあります。

業界特化条項のNG/OK比較

IT業界の雇用契約書で実際に使われるが、法的リスクがある記載(NG)と適切な代替表現(OK)を比較します。

条項 NG記載例 OK記載例 理由
著作権帰属 「作成した全ての成果物の著作権は永久に会社に帰属する」 「業務上作成した著作物のうち著作権法15条の要件を満たすものは会社に原始帰属し、満たさないものは会社に譲渡する。業務外で作成したものは個人に残り、業務で使うときは書面で合意する」 「全ての」は業務外・入社前成果物まで含むと主張されやすく過広
競業避止 「退職後3年間、IT業界での就業を禁止する」 「退職後1年間、在職中に担当した主要顧客への直接営業・スカウト・引抜きを行わない。その対価として、退職金に○%加算する」 期間過長・範囲過広・代償なしで無効リスク大(東京地判H24.1.13は2年間の転職禁止を相当とは言い難いと判断)
損害賠償 「情報漏洩が発生した場合、当該社員は全ての損害を賠償する」 「故意または重大な過失による情報漏洩については、会社の実損害の範囲内で賠償義務を負う」 損害賠償の予定・事前確定は労基法16条違反。故意・重過失に限定し実損額に限定する表現が必要
裁量労働 「本人の同意なく裁量労働制を適用する」 「分析又は設計の業務に限り、専門業務型裁量労働制(みなし8時間)を適用する。本人の書面同意を取得し、同意撤回は○○部門へ申し出ることができる」 本人の同意と撤回の手続は、労基則24条の2の2第3項で定めるべき事項。同意を得ずに適用すると要件を欠く
副業禁止 「副業・兼業を一切禁止する」 「副業・兼業は事前届出制とし、競業他社案件・機密情報流出リスクのある案件は不承認とする場合がある」 厚労省のガイドラインは副業・兼業を促進する方向。一律禁止が認められるかは個別の事情で判断される
退職引継ぎ 「引継ぎが完了するまで退職を認めない」 「退職を希望する日の30日前までに申し出る(会社の求める目安)。引継ぎは退職日までに誠実に行う。引継ぎが終わっていなくても、退職の効力には影響しない」 期間の定めのない雇用は、申入れの日から2週間で終了する(民法627条1項)。引継ぎを退職の条件にする書き方は、この規定とぶつかる

よくある質問

IT雇用契約書で最も重要な条項はどれですか?
著作権の帰属と職務発明(特許法35条)の定めが特に重要です。エンジニアが業務で作成したコード・設計書は、要件を満たせば職務著作(著作権法15条)として会社に帰属しますが、明示した定めがないと帰属が曖昧になります。職務発明は、契約や勤務規則であらかじめ会社に特許を受ける権利を取得させると定めておけば、発生時から会社に帰属し(35条3項)、従業者には相当の利益を受ける権利があります(4項)。次いで重要なのが、裁量労働制の本人同意と撤回手続(労基則24条の2の2第3項)と、競業避止条項の代償措置の有無です。
著作権譲渡と職務著作の違いは何ですか?
職務著作(著作権法15条)は、法定の要件を満たせば著作権が最初から会社に帰属する制度です。要件は①法人等の発意による、②法人等の業務に従事する者が作成、③職務上作成するもの、④契約・勤務規則等に別段の定めなし、の4点です。このほか、プログラムを除く著作物(1項)には「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」という要件があります。プログラムの著作物(2項)にはこの公表名義の要件がありません。一方、著作権譲渡は個人著作として発生した権利を会社へ移転する手続きです。業務外・プライベートで作成したコードは個人著作のため、会社に使用させる場合は別途ライセンス許諾または著作権譲渡契約が必要です。雇用契約書では「職務著作の認定・職務外著作の会社利用手続き・退職後の権利帰属」を明記することが重要です。
職務発明規程を就業規則と雇用契約書どちらに書けばよいですか?
特許法35条3項は、「契約、勤務規則その他の定め」において、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させると定めたときは、その権利は発生した時から使用者等に帰属する、と定めています。定める場所は、就業規則・雇用契約書・別紙の発明規程のいずれでも構いません。このテンプレートは、雇用契約書の第14条で帰属を定め、相当の利益の算定基準を別の「職務発明取扱規程」に任せる形です。相当の利益の定めは、基準づくりでの協議、基準の開示、意見の聴取の状況などから見て不合理と認められるものであってはならず(5項)、定めがない、または不合理と認められるときは、利益の内容は7項の事情で決まります。採用時に基準を示しておくことが重要です。
SES契約と雇用契約の偽装請負はどう見分けますか?
指揮命令の主体が判断の核心です。次のような事情は、偽装請負(実態が労働者派遣と判断される)と見られる方向に働く例です(判断は実態で行われ、一つで決まるものではありません)。①派遣先(クライアント)の社員が作業の指示・管理を直接行う、②労働時間・休憩時間を派遣先が管理する、③就業規則・服務規律が派遣先のものを適用される、④業務ツール(GitHub権限・Slackチャンネル等)を派遣先がすべて管理する。準委任契約として行うSESでは、作業の指示は自社(受託側)の責任者が行い、クライアントは依頼内容を伝えるにとどまります。偽装請負は発注側・受注側の双方にリスクがありますが、条文は別です。受注側は、許可を受けずに労働者派遣事業を行ったこと(5条1項)として、59条2号により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。発注側は、24条の2(派遣元事業主以外から労働者派遣の役務の提供を受けることの禁止)に違反すると、49条の2の勧告と、従わないときの公表の対象になります。さらに、この法律の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約し、派遣の役務の提供を受けた場合は、その時点で派遣労働者に労働契約の申込みをしたものとみなされます(40条の6第1項5号。行為が該当することを知らず、知らなかったことに過失がなかったときを除く)。
裁量労働制を適用するための2024年改正の要件は?
専門業務型裁量労働制では、労基法38条の3第1項6号に基づく労働基準法施行規則24条の2の2第3項が、本人の同意と同意の撤回の手続を労使協定で定めるべき事項にしています(2024年4月から適用)。同項は次の4つを挙げています。①労働者本人の同意を得なければならないこと、および同意しなかった労働者に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないこと、②同意の撤回に関する手続、③協定の有効期間の定め、④労働者ごとの記録(労働時間の状況と健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意とその撤回)を、有効期間中と満了後5年間保存すること。省令は同意を書面で取ることまでは求めていませんが、証拠として書面で取っておくのが確実です(このテンプレートの第6条4項は書面)。届出は様式第13号で所轄の労働基準監督署長にします(同条4項)。
OSS(GPL・MIT等)を業務で使う場合の雇用契約書上の注意は?
GPLv3は、コピーを手にした人に対して、作品全体をこのライセンスで許諾することを求めます(5条c)。社内のコードにGPLのコードを組み込んで社外に渡すと、この条件が及ぶことがあります。雇用契約書または社内のOSSポリシーで、次のような内容を定めておくと安心です(このテンプレートの第20条は①と②、OSS公開の事前承認を定めています)。①業務利用前の承認フロー(ライセンス種別確認)、②コピーレフト系(GPL/AGPL)の使用禁止または社内審査必須の明示、③外部OSSへの貢献時の会社コード混入防止義務、④ライセンス違反発生時の帰責(会社 vs 個人)の明確化。
競業避止義務で「特定の技術スタック」への制限は有効ですか?
特定の技術スタック(例: Rustバックエンド開発業務)への従事制限は、職業選択の自由(憲法22条)への侵害として無効となるリスクが高いです。使用する言語・フレームワーク・技術領域で制限すると、範囲が広すぎる・曖昧だとして無効と判断されるおそれがあります。制限の対象は、競合する事業や企業を具体的に特定して書くのが安全です。書き方の例(あくまで一例で、有効かどうかは個別の事情で判断されます):「退職後1年間、在職中に担当した主要顧客への直接営業・スカウト・引抜きを行わない。その対価として、退職金に○%加算する」といった形です(このテンプレートの第21条はこの形です)。
リモートワーク勤務中の通信費・光熱費はどう扱いますか?
在宅勤務の費用負担は労使間の合意事項で、法的義務はありませんが、費用を労働者に全額負担させると賃金控除(労基法24条)に問題が生じる場合があります。実務では「実費精算」「定額補助(在宅勤務手当)」「会社が機器・回線を貸与し費用負担なし」の3パターンに整理でき、どれを採るかを契約書で決めておく必要があります。雇用契約書には①通信費(実費精算 or 月額○○円)、②光熱費(対象外 or 月額○○円)、③会社貸与PC/BYODの別、④消耗品(マウス・椅子等)の負担者を明記します。定額補助を固定残業代と誤解される表記は避けてください。
退職時にGitHub・AWSのアカウントはどう引き渡しますか?
雇用契約書または就業規則の退職条項に「アクセス権限の返却・抹消義務」を明記することが重要です。実務上のチェックリスト:①GitHubのOrganizationメンバーからの除外(Owner権限で実施)、②AWSのIAMユーザー・ロールの削除またはリセット、③Slackアカウントの無効化、④社内GitLab・Confluenceの権限剥奪、⑤SSH公開鍵の削除、⑥VPN証明書の失効処理。これらを退職日から○営業日以内に完了する旨と、退職者の協力義務(個人アカウントのキーペア削除等)は、必要に応じて雇用契約書に足してください(このテンプレートの第25条3項は貸与物の返還を定めていて、アカウント削除の期限までは入れていません)。退職後にアクセスが残ったまま利用されると、不正アクセス禁止法3条(不正アクセス行為の禁止)や不正競争防止法違反の問題が双方に発生します。
ストックオプションがある場合、雇用契約書にどこまで書きますか?
雇用契約書本文には「付与する場合は別途付与契約による」程度の記載にとどめ(このテンプレートの第12条3項はこの形です)、詳細は別紙SO契約書で定めます。別紙に書く事項の例:①付与株数(または上限株数)、②権利行使価格、③ベスティングスケジュール(例: 4年・1年クリフ)、④権利行使期間(税制適格にする場合は、付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日まで。一定の会社は15年)、⑤Good Leaver条項(自己都合退職でも按分ベスト)とBad Leaver条項(懲戒解雇でSO消滅)、⑥税制適格SO要件(租税特別措置法29条の2)の充足確認。税制適格の年間の権利行使価額は合計1,200万円までで、設立後の期間により価額を2で割る・3で割る計算があります(同条1項)。
副業でOSS活動やフリーランス受注をする場合の届出は?
雇用契約書に届出の義務を書いておくと、副業をめぐる行き違いを減らせます(このテンプレートの第22条は事前に書面で届け出る形で、厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の考え方を踏まえています)。OSS活動が副業にあたるかは、報酬の有無や業務との近さで会社が決めて、あらかじめ契約書に書いておきます。次のような場合は、別途届出・承認を必要とする設計が考えられます。①OSS活動で報酬(Sponsorsからの寄付・バウンティ等)を受ける場合、②業務と同一・近接の技術領域でのフリーランス受注、③競合他社のOSS(例: 競合プロダクトのエコシステム)への貢献。副業先の労働時間との通算(労基法38条1項)や、使用者側の健康配慮義務(労契法5条)の観点からも管理が必要です。
入社前課題(コードテスト)の著作権は誰のものですか?
採用選考中(雇用契約締結前)に提出したコードは、労働者ではないため職務著作は成立せず、原則として応募者(個人)に著作権があります(著作権法17条)。会社が入社前課題のコードを業務に転用・流用する行為は著作権侵害となります。雇用契約書には「採用選考過程で提出した成果物の取扱い(返却・削除・転用禁止)」を明記し、入社後に同テーマで業務として再開発する場合は別途書面で合意することが重要です。採用選考の時点で、NDAや成果物の帰属の合意書を別に結ぶ例もあります。

参考文献・出典

本ページの内容は以下の公的情報源に基づき作成しています(2026-10-12 確認時点)。

このテンプレートは役に立ちましたか?

探している書式が見つからないときは、リクエストを送ってください。