始末書とは
始末書は、ミスや規則違反について、事実・原因・再発防止策を、会社に書面で出すものです。
始末書の書式や提出を定めた法律は、e-Gov の検索では見つかりませんでした。会社が始末書を求める根拠は、主に就業規則の懲戒の定めです。厚生労働省のモデル就業規則(第67条)では、けん責と減給に「始末書を提出させて」と書かれています。詳しくは、下の「始末書の根拠は、法律でなく就業規則」の節に原文を載せています。
事実の経緯を報告する書面は「顛末書」、再発しない約束を別に出す書面は「誓約書」です。違いは、下の「始末書と顛末書・反省文・謝罪文の違い」の節にまとめています。
始末書の白紙と記入例(7パターン)
上のダウンロード欄に、白紙の始末書(Word・PDF)、Excel(汎用の1枚だけ)、記入例PDF があります。白紙は、汎用の1枚と、7パターンの各1枚(合計8ページ)です。遅刻・早退だけ、無断欠勤だけの Word も、別に配布しています。会社に所定の様式があるときは、その様式を優先してください。
各パターンに、記入例(人物・会社・日付・数字は架空)の画像と全文、白紙の欄、書かないことを並べています。「この文面をコピー」を押すと、全文がコピーされます。白紙の印刷物には、「記入例」や注意書きは印字していません。
汎用の始末書(A4 1枚)
どの事案にも使える基本の1枚です。事案の名称を件名に書き、事実・原因・影響・対応・再発防止策の順に埋めます。
汎用の始末書(白紙)の全文(そのままコピーして使えます)
始 末 書
令和 年 月 日
(宛先の役職・氏名) 殿
所属:
氏名: 印
件名 (事案の名称)に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
発生した事実(日時・場所・内容)
日時:令和 年 月 日 時 分頃
場所:
内容:
原因
影響(会社・取引先・関係者)
実施済みの対応
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・
・
・
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 発生した事実 | 日時・場所・内容を、いつ・どこで・何があったかの順で書く。確認できたことだけを書く |
| 原因 | 分かっている事実から書く。分からないことは、分からないと書く |
| 影響 | 会社・取引先・関係者にどんな影響があったか。数字(人数・件数・分・円)があれば入れる |
| 実施済みの対応 | 起きたあとに、すでにやったこと。日付を入れる |
| 再発防止策 | 実行する内容と開始時期を1行に。「気をつけます」だけにしない |
書かないこと:事実の欄に、推測や相手の気持ちの決めつけを書かない。
パターン1:遅刻・早退
始業時刻に遅れたとき、または早退したときの始末書です。
パターン1:遅刻・早退(記入例)の全文
始 末 書
令和8年10月14日
営業部長 佐藤 一郎 殿
所属:株式会社サンプル商事 営業部 第一課
氏名:田中 太郎 印
件名 遅刻(早退)に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
発生日(曜日も書く) 令和8年10月13日(火曜日)
始業時刻 9時00分
到着(退勤)時刻 9時40分
遅刻(早退)時間(分) 40分
連絡の有無(いつ・誰に・手段) 有(9時10分に、課長へ、電話で連絡)
理由(書ける範囲) 前夜に目覚ましの設定を忘れ、起床が8時30分になった。
影響 朝のミーティング(9時15分開始)の前半25分に参加できず、課長から内容を共有してもらった。
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・前夜の就寝前に、目覚ましを2つ設定して確認する(令和8年10月14日から)
・始業に間に合わないと分かった時点で、始業前に課長へ電話で連絡する(令和8年10月14日から)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:発生日・始業時刻・到着(退勤)時刻・遅刻(早退)時間・連絡の有無・理由・影響・再発防止策(白紙のWord・PDFの2ページ目)
書かないこと:理由の欄に、家族や自分の健康の細かい事情まで書く必要があるかは、会社に確認してから決める。
パターン2:無断欠勤
連絡をしないで休んだときの始末書です。連絡できなかった事情があれば、その欄に書きます。
パターン2:無断欠勤(記入例)の全文
始 末 書
令和8年10月20日
製造課長 山口 次郎 殿
所属:株式会社テスト工房 製造課
氏名:鈴木 花子 印
件名 無断欠勤に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
欠勤日(連続したときは期間)
令和8年10月19日(月曜日)
連続したときの終了日:連続していません
連絡した時刻と相手(連絡できなかった場合はその事情) 10時30分に、課長へ、電話で連絡。始業は8時30分で、2時間経ってからの連絡だった。
理由(書ける範囲) 出勤日の予定を取り違え、休みだと思い込んでいた。10時に課長からの着信に気づいて、出勤日だったと分かった。
業務への影響と対応 終日、ラインの人員が1名足りず、他の班の1名が補った。10時30分に課長へ連絡し、その日は出勤しなかった。
再発防止策(連絡の手段・頼る人)
・勤務予定表を、前の週の金曜日に自分で確認し、手帳にも写す(令和8年10月23日から)
・始業時刻までに出勤できないと分かった時点で、すぐに課長へ電話で連絡する(令和8年10月20日から)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:欠勤日・連絡した時刻と相手・理由・業務への影響と対応・再発防止策(白紙のWord・PDFの3ページ目)
書かないこと:理由の欄に、医療や家庭の事情を細かく書くかは、会社に確認してから決める。
再発しない約束を、始末書とは別の書面で出す場面は、誓約書のページを見てください。この書式には、誓約の文は入れていません。
パターン3:業務ミス(誤発注・誤送信・納期遅れ)
取引先や社内に影響が出たミスの始末書です。誤発注、誤った宛先への送信、納期の遅れなどに使います。
パターン3:業務ミス(誤発注・誤送信・納期遅れ)(記入例)の全文
始 末 書
令和8年10月13日
購買課長 高橋 三郎 殿
所属:株式会社デモ産業 購買課
氏名:伊藤 四郎 印
件名 業務上のミスに関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
発生日(曜日も書く) 令和8年10月6日(火曜日)
業務の内容 製造課が使う部品の発注(商品コード ABC-123 の部品300個)
ミスの内容 商品コードを取り違え、ABC-123 のところを、ABC-321 の部品300個で発注した。
発見の経緯(日時・発見した人) 令和8年10月9日(金曜日)の納品のとき、受け入れ担当者が、製造課の依頼書のコード(ABC-123)と納品物のコード(ABC-321)が違うことに気づいた。
影響(相手・金額・数量) 製造課で使う部品が300個足りず、製造の開始が2日遅れる見込み。誤って発注した部品の金額は123,000円。
実施済みの対応 令和8年10月9日(金曜日)に仕入先へ連絡し、300個の返品と、正しい部品の納品を依頼した。正しい部品は令和8年10月13日(火曜日)に納品される予定。
原因 発注書を作るとき、商品コードを手で入力し、依頼書のコードと見比べなかった。
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・発注書を作ったあと、依頼書のコードと見比べる(購買課の全員/令和8年10月14日から)
・商品コードは、手で入力せず、商品一覧から選んで入力する(購買課/令和8年10月30日まで)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:発生日・業務の内容・ミスの内容・発見の経緯・影響・実施済みの対応・原因・再発防止策(白紙のWord・PDFの4ページ目)
書かないこと:原因の欄に、他の人の名前や、推測を事実のように書かない。
パターン4:紛失(備品・書類・データ媒体)
物を失くしたときの始末書です。入っていた情報の有無と、探した・届け出た記録を書きます。
パターン4:紛失(備品・書類・データ媒体)(記入例)の全文
始 末 書
令和8年10月23日
総務部長 小林 六郎 殿
所属:株式会社エグザンプル 総務課
氏名:渡辺 五郎 印
件名 物品の紛失に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
物品名 社用スマートフォン1台(管理番号 K-0457)
最後に確認した日時・場所 令和8年10月21日(水曜日)18時30分、本社3階の会議室
気づいた日時 令和8年10月22日(木曜日)9時00分
報告した日時・相手 令和8年10月22日(木曜日)9時10分、総務部長へ口頭で報告
入っていた情報(個人情報・社外秘の有無) 取引先の担当者の連絡先(氏名・電話番号)約40件。画面ロックの設定あり。
実施済みの対応(捜索・届出) 令和8年10月22日(木曜日)9時20分に、遠隔でロックをかけた。会議室と執務室を探し、11時に警察署へ遺失物の届出をした。
原因 会議のあと、スマートフォンを机の上に置いたまま退室し、退室の前に持ち物を確認しなかった。
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・会議室を出る前に、机の上を見て持ち物を確認する(令和8年10月23日から)
・社用スマートフォンは、ストラップを付けて持ち歩く(令和8年10月30日から)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:物品名・最後に確認した日時・場所・気づいた日時・報告した日時・相手・入っていた情報・実施済みの対応・原因・再発防止策(白紙のWord・PDFの5ページ目)
書かないこと:見つかっていない物の中身を、確認できていないまま断定して書かない。
パターン5:交通事故(社用車・物損)
業務中の車両事故の始末書です。警察と保険会社への連絡の時刻を書く欄があります。事故の報告そのものは、始末書とは別に必要です。
パターン5:交通事故(社用車・物損)(記入例)の全文
始 末 書
令和8年10月28日
所長 中村 八郎 殿
所属:株式会社サンプル運輸 配送課
氏名:加藤 七美 印
件名 業務中の交通事故に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
日時(曜日も書く) 令和8年10月27日(火曜日)14時10分頃
場所 お客様A社の来客用駐車場
状況 配送のため駐車場でバックしたとき、後ろに停めてあった他の車の前のバンパーに、社用車の後部が接触した。
相手・車両 相手方は、車の所有者のB様(連絡先を交換した)。普通乗用車。
負傷者の有無 なし
警察への届出(日時・方法) 令和8年10月27日(火曜日)14時30分に、電話で届け出た。警察官が来て、現場を確認した。
保険会社・会社への連絡(日時・方法) 会社へ14時45分に電話で連絡。保険会社へ15時10分に連絡。
原因 後退するとき、ミラーだけを見て、車を降りて後方を目で確認しなかった。
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・後退するときは、車を降りて後方を目で確認する(令和8年10月28日から)
・客先に着いたら、はじめに駐車する場所を確認する(令和8年11月2日から)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:日時・場所・状況・相手・車両・負傷者の有無・警察への届出・保険会社・会社への連絡・原因・再発防止策(白紙のWord・PDFの6ページ目)
書かないこと:過失の割合を、自分で決めて書かない。
パターン6:情報漏洩(メールの誤送信など)
社外に情報が出たときの始末書です。個人情報保護委員会など(業種によっては権限の委任を受けた省庁)への報告が要るかどうかは会社が判断するもので、始末書の欄には書きません。
パターン6:情報漏洩(メールの誤送信など)(記入例)の全文
始 末 書
令和8年10月30日
営業企画部長 山本 十郎 殿
所属:株式会社テスト商会 営業企画課
氏名:吉田 九美 印
件名 情報の漏洩に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
発生日時(曜日も書く) 令和8年10月28日(水曜日)16時40分頃
内容(宛先・添付) 取引先C社の担当者あての見積書(PDF)1通を、宛先の候補に出た名前の似た別の取引先D社の担当者へ、メールで送信した。
漏洩した情報の種類と件数 C社向けの単価と数量(見積書1通)。個人情報は含まれていない。
発見の経緯 令和8年10月28日(水曜日)17時00分に、C社の担当者から「見積書が届いていない」と連絡があり、送信の履歴を見て気づいた。
実施済みの対応(回収依頼・上司と情報管理担当への報告) 17時05分に、上司と情報管理担当へ報告した。17時20分にD社の担当者へ電話でおわびし、メールの削除を依頼した。令和8年10月29日(木曜日)9時30分に、削除したとのメールを受け取った。
原因 宛先を入力するとき、候補から選んだあと、宛先のアドレスを確認しなかった。
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・社外へのメールは、送信の前に、宛先のアドレスと添付ファイルを声に出して確認する(令和8年10月30日から)
・見積書などを社外へ送る前に、上司が宛先のアドレスを確認する(営業企画課/令和8年11月13日から)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:発生日時・内容・漏洩した情報の種類と件数・発見の経緯・実施済みの対応・原因・再発防止策(白紙のWord・PDFの7ページ目)
書かないこと:漏洩した情報の件数を、確認できていないまま少なく書かない。
個人情報保護委員会への報告が要るかどうかは、会社が判断します。報告の要件と期限は、顛末書のページに条文の原文があります。
パターン7:社内での言動(指摘を受けた場合)
社内で言動を指摘され、会社から始末書を求められたときの書式です。欄は事実だけで、ハラスメントに当たるかどうかを書く欄はありません。
パターン7:社内での言動(指摘を受けた場合)(記入例)の全文
始 末 書
令和8年11月2日
技術課長 井上 二郎 殿
所属:株式会社デモ工業 技術課
氏名:松本 一美 印
件名 社内での言動に関する始末書
このたびの下記の件について、事実と再発防止策を報告します。
日時・場所(曜日も書く) 令和8年10月26日(月曜日)10時から、第2会議室での定例会議
指摘を受けた言動(事実のみ) 会議の中で、同じ課のEさんの資料の誤りについて、「こんなこともできないのか」と述べた。
相手との関係 同じ課の後輩(入社3年目)
会社の調査・面談の経緯 令和8年10月29日(木曜日)に、人事部の担当者との面談を受け、上記の発言について確認された。
現在の受け止め 上記の発言をしたことは、そのとおりである。ハラスメントに当たるかどうかの判断は、会社が行うものと受け止めている。
再発防止策(実行する内容・開始時期)
・会議での指摘は、人格や能力に触れず、直す点と期限を具体的に伝える(令和8年11月2日から)
・資料の確認は、会議の前に個別に行う(技術課/令和8年11月9日から)
上記のとおり、事実に相違ありません。
再発防止策を実行してまいります。
以上
白紙の欄:日時・場所・指摘を受けた言動・相手との関係・会社の調査・面談の経緯・現在の受け止め・再発防止策(白紙のWord・PDFの8ページ目)
書かないこと:ハラスメントに当たるかどうかの判断や、相手の気持ちの推測を書かない。判断は会社が行う。
この書式の欄は、事実だけです。ハラスメントに当たるかどうかを書く欄はありません。当たるかどうかの判断は会社が行うもので、この書式の「現在の受け止め」は、その判断を認める欄ではありません。
始末書の書き方(5つの順序)
始末書の書式を定めた法令は、見つかりませんでした。e-Gov 法令検索で「始末書」を検索すると4件ありますが、刑事訴訟法の「執行始末書」など、会社の懲戒とは別の文脈でした(2026-10-13)。次の順序は、この書式の作りです。法令で決まった順序ではありません。
1. 事実
いつ・どこで・何があったかを、確認できたことだけで書きます。曜日も書きます。相手の気持ちの推測や、評価の言葉は、事実の欄に入れません。
2. 原因
分かっていることから書きます。分からないことは、分からないと書きます。原因を後から決めつけて書くと、事実と食い違うおそれがあります。
3. 影響
会社・取引先・関係者に、どんな影響があったかを書きます。人数・件数・時間・金額などの数字があれば入れます。確認が終わっていない数字は、確認中と書きます。
4. 再発防止策
実行する内容と、開始する時期を、1行に入れます。「気をつけます」だけで終わらせません。
5. 結び
「上記のとおり、事実に相違ありません。」と書き、日付・所属・氏名を書いて押印します。「以上」で終えます。
枚数・フォント・提出先・手書きとスマホ
- 何枚・何行か:決めた法令は見つかりませんでした。会社の指定に従います。指定がなければ、A4で1枚が読みやすい量です。
- フォント・字の大きさ:決めた法令は見つかりませんでした。会社の指定に従います。
- 手書きか、パソコンか:決めた法令は見つかりませんでした。会社の指定に従います。白紙のWord・PDFは、印刷して手書きにも、Word に入力にも使えます。
- スマホで作れるか:各書式の「この文面をコピー」で、全文をメールやメモに貼って書き込めます。提出の形式(紙・PDF・メール本文)は、会社の指定に従います。
- どこに出すか:決めた法令は見つかりませんでした。直属の上司、所属長、人事部・総務部など、会社の指示に従います。
- 最後の言葉:この書式は「以上」で終えます。
始末書と顛末書・反省文・謝罪文の違い
| 書類 | 主な使い方 | 主に書くこと | 出す相手の例 |
|---|---|---|---|
| 始末書 | ミスや規則違反について、会社に書面で出す | 事実・原因・影響・対応・再発防止策 | 上司・所属長・人事部 |
| 顛末書 | 事案の経過を、事実で報告する。社外に出すこともある | 経緯・原因・対応・再発防止策 | 上長・管理部門・取引先 |
| 反省文 | 会社が、反省の内容を書かせるときに使う | 会社の指示による | 会社の指示による |
| 謝罪文 | 相手に、おわびを伝える | おわびの言葉・事実・今後の対応 | 取引先・顧客・関係者 |
この表は、実務での一般的な使い分けで、法令上の定義ではありません。会社によって、呼び方も使い分けも違います。会社から「始末書を書いてください」と言われたときは、会社が求めている書類の内容と、出す先を、その場で確認してください。「顛末書で足りるか」は、会社が決めることです。
始末書と顛末書は、どちらが重いか、という質問もあります。どちらが重いかを定めた法令は、見つかりませんでした。始末書は、就業規則に懲戒の種類として定められていることがあります(次の節)。
始末書の根拠は、法律でなく就業規則
始末書を定めた法律は、e-Gov 法令検索の検索結果(2026-10-13)では見つかりませんでした。会社が始末書を求める根拠は、主に就業規則の懲戒の定めです。厚生労働省の「モデル就業規則」(令和7年12月版)は、次のように書いています( 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第67条・第68条とその解説 )。
表彰及び制裁について、その種類及び程度に関する事項は、就業規則の相対的必要記載事項に当たりますので、これらについて定めをする場合には、必ず就業規則に記載しなければなりません。(モデル就業規則 第12章の解説)
① けん責 始末書を提出させて将来を戒める。② 減給 始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。③ 出勤停止 始末書を提出させるほか、〇日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。(モデル就業規則 第67条 懲戒の種類。〇は空欄)
つまり、モデル就業規則では、始末書の提出は、けん責・減給・出勤停止に付いています。ほかに、同じ解説には次の記述があります。
- 「懲戒処分の種類については、本規程例に掲げる処分の種類に限定されるものではありません」(第67条の解説)
- 「就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできません」(第68条の解説)
- 「就業規則に懲戒規定を設ける前にした労働者の行為に対して、さかのぼって懲戒処分をすることや、1回の懲戒事由に該当する行為に対し複数回の懲戒処分を行うことはできません」(第68条の解説)
- 「労働者が、遅刻や早退をした場合、その時間については賃金債権が生じないため、その分の減給は労基法第91条の制限は受けません。しかし、遅刻や早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、労基法第91条に定める減給の制裁に関する規定の適用を受けます」(第67条の解説)
これらはモデル就業規則の解説の引用で、裁判の結果を述べたものではありません。自分の会社の就業規則が、どう定めているかは、会社の就業規則で確かめてください。
法律側の条文は、次のとおりです( 労働基準法 、 労働契約法 )。
- 労働基準法第89条第1項第9号:「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を、就業規則に書く(常時十人以上の労働者を使用する使用者)
- 労働基準法第91条:「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」
- 労働契約法第15条:「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」
始末書を求められたとき(書く前に確認すること)
- 就業規則に、定めがあるか:始末書を求める根拠は、主に就業規則です。就業規則の懲戒の章(けん責・減給・出勤停止など)を、書く前に確認してください。
- 事実と違うところがないか:会社が用意した文面があるときは、全文を読み、事実と違うところは、出す前に会社に伝えてください。
- 損害賠償にかかわりうる事案か:不正・横領・重大な事故など、損害賠償が問題になりうる事案は、署名の前に弁護士に相談してください。
- 相談先:厚生労働省の総合労働相談コーナーは、「解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています」。予約不要・無料で、労働者も事業主も相談できます( 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 )。
始末書の提出を拒否できるか
確認できていません。始末書の提出を拒否できるか、拒否したことを理由に会社がさらに処分できるかは、このページでは、判例も、確認できた一次情報も示せません。提出を求められて迷うときは、書く前に、就業規則の定めを確かめ、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
始末書を書かせることはパワハラか
労働施策総合推進法第31条第1項は、事業主が講じるべき措置の対象を、こう定めています( 労働施策総合推進法 第31条 )。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、…必要な措置を講じなければならない。
始末書を求めることが、この「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」に当たるかは、個別に判断されます。始末書の要求について書いた条文や指針は、確認できていません。
始末書を出したあとの人事評価
始末書の提出が、人事評価・賞与・昇進にどう影響するかは、会社の人事制度によります。確認できる一次情報は見つかっていません。
損害賠償を求められたら
始末書には、損害の金額や賠償の約束を書く欄を設けていません。損害賠償の話が出たときは、署名の前に、弁護士に相談してください。関係する条文と判決を、原文で示します。
- 民法第715条第3項:「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」( 民法 第715条 )
- 労働基準法第16条:「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」( 労働基準法 第16条 )
- 最判S51.7.8(茨石事件):「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」( 裁判所 最判S51.7.8(昭和49(オ)1073) )
この事件は、使用者が請求できる額を、損害の4分の1までとしました。これはこの事件の判断です。ほかの事案に、同じ割合が当てはまるとは限りません。
始末書を出したあとの退職・転職
- 退職:民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用について、「解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています( 民法 第627条 )。始末書を出したかどうかは、この条文に出てきません。
- 退職証明書:労働基準法第22条第3項は、「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。」と定めています( 労働基準法 第22条 )。
- 転職先に始末書のことを伝える義務:確認していません。
始末書の保管については、労働基準法第109条が、「労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない」と定めています。ただし、労働基準法附則第143条第1項は、「第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする」と定めているので、当分の間の保存期間は三年間です( 労働基準法 附則第143条 )。始末書がこの「重要な書類」に当たるかは、条文から読めません。確認できていません。
公務員の始末書
国家公務員法第82条は「懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる」、地方公務員法第29条は「懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる」と定めています( 国家公務員法 第82条 、 地方公務員法 第29条 )。懲戒処分の種類に、始末書は出てきません。
公務員の始末書が、実務でどういう位置づけか(訓告・厳重注意などとの関係)は、確認できていません。任命権者の指示に従ってください。
公務員向けの白紙(任命権者宛て・所属長経由)は、Word で配布しています。公務員の始末書(白紙3パターン・Word)。
- 信用失墜行為の指摘を受けた場合:上司や住民などから行為を指摘され、始末書を求められたときの書式です。
- 公用物品の破損・亡失:公用の物品を壊した、または失くしたときの始末書です。
- 事務処理上のミス:窓口や庶務の事務処理で、ミスがあったときの始末書です。
業種別の始末書(医療・介護・IT)
医療・介護の現場(投薬・与薬のミス、転倒・転落、患者・利用者の情報の漏えい)の白紙は、医療・介護の始末書のページ、ITの現場(情報漏えい・不正アクセス、障害・サービス停止、データ消失)の白紙は、ITインシデントの始末書のページにあります。
建設業・飲食店・介護施設向けの個別の様式は、配布をやめました。事実の欄は、このページの業務ミス・紛失・交通事故などの白紙で書けます。
関連するテンプレート
- 顛末書テンプレート:事案の経過を、事実で報告する書類
- 誓約書テンプレート:再発しない約束を、始末書とは別に書面で出すとき
- 報告書テンプレート(Word)
- 懲戒の手続きパック:始末書を求める側(会社)の書類
- 退職届テンプレート
よくある質問
始末書とは何ですか?
始末書を書くと、まずいことになりますか?
始末書を書かされるのは、パワハラですか?
始末書を出すと、懲戒処分になりますか?
始末書は何枚・何行で書けばよいですか?
始末書は、誰に出しますか?
始末書の提出を拒否できますか?
始末書と顛末書は、何が違いますか?
始末書を出すと、評価や賞与に響きますか?
始末書を出したあとでも、退職できますか?
参考文献・出典
本ページの内容は以下の公的情報源に基づき作成しています(2026-10-13 確認時点)。
- 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第67条・第68条とその解説
- e-Gov 労働基準法(第16条 賠償予定の禁止、第22条 退職時等の証明、第89条 作成及び届出の義務、第91条 制裁規定の制限、第109条 記録の保存、附則第143条 第109条の保存期間の読み替え)
- e-Gov 労働契約法(第15条 懲戒、第16条 解雇)
- e-Gov 民法(第627条 期間の定めのない雇用の解約の申入れ、第715条 使用者等の責任)
- e-Gov 労働施策総合推進法(第31条 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
- e-Gov 国家公務員法(第82条 懲戒)
- e-Gov 地方公務員法(第29条 懲戒)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- 裁判所 最判S51.7.8(昭和49(オ)1073)
- e-Gov 法令検索(キーワード「始末書」の検索結果)
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