不動産

原状回復ガイドライン

国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」を出典にした原状回復ガイドを無料配布。借主負担・貸主負担の境界早見表・退去時チェックリストと、査定用エクセル(物件情報/査定一覧/部位別集計/敷金精算書/ガイドライン解説/使い方の6シート)を同梱。敷金返還トラブルの対処法も解説。

公開: 2026年5月7日 最終更新: 2026年10月12日 PDFエクセルWord 会員登録不要・無料
2026年10月12日 時点の情報
国土交通省 原状回復ガイドライン
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原状回復ガイドラインのテンプレートプレビュー
原状回復ガイドライン(PDF / エクセル / Word・会員登録不要・無料DL)
このページでわかること
  • 原状回復の「借主負担 vs 貸主負担」の境界を国交省ガイドライン基準で理解できる
  • 退去時チェックリストと、査定用エクセル(物件情報/査定一覧/部位別集計/敷金精算書/ガイドライン解説/使い方の6シート)を無料ダウンロードできる
  • 退去立会いのチェックポイントと敷金返還トラブルの対処法がわかる

原状回復は、賃貸住宅を退去するときに、借主が自分の責任で付けた傷や汚れを直して返すことです。借主負担と貸主負担の境界早見表、退去時チェックリスト(PDF)、査定用エクセル、精算書(Word)を無料で配布しています。

原状回復とは(基本知識)

民法621条 は、借主が賃借物を受け取った後に生じた損傷(「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」を除く)を、賃貸借が終了したときに原状に復する義務を定めています。つまり、普通に生活していて生じた汚れや傷は借主が直さなくてよいのが原則です。

ポイント内容
法的根拠民法621条(賃借人の原状回復義務)
国交省ガイドラインの位置づけトラブルの未然防止の観点から「妥当と考えられる一般的な基準」をまとめたもので、使用を強制するものではない(国交省 参考資料)
特約との関係特約が有効に成立する3要件(国交省):①特約の必要性があり、かつ暴利的でないなど客観的・合理的理由があること②借主が通常の原状回復義務を超える義務を負うことを認識していること③借主が義務負担の意思表示をしていること

借主負担と貸主負担の境界

区分定義具体例
借主負担故意・過失・善管注意義務違反、通常の使い方を超える使い方による損耗タバコ等のヤニ・臭い(クロスの変色や臭いの付着)・重量物をかけるためのくぎ穴やネジ穴(下地ボードの張替えが要るもの)・ペットによる柱やクロスのキズ・臭い・エアコンの水漏れを放置した壁の腐食・引越作業で生じた引っかきキズ・落書き
貸主負担経年変化・通常損耗(普通に暮らしていても生じるもの)日照による壁紙や畳の変色・テレビや冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみ(電気ヤケ)・家具の設置による床やカーペットのへこみ・画鋲やピンの穴(下地ボードの張替えが要らないもの)・寿命による設備の故障
手入れしだいで借主負担普通に使っていても起きるが、手入れを怠って生じたり広がったりした分は借主負担結露を放置して広がったカビ・シミ(貸主に知らせず、拭き取りもせずに壁を傷めた場合)・冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置して床を汚した場合)・台所の油汚れ(使った後の手入れが悪くススや油が付いた場合)

区分と例は、国交省ガイドライン(再改訂版)の別表1(p.17〜19)と、契約書に付ける「賃貸人・賃借人の修繕分担表」(p.25)によります。壁の穴は数ではなく、重量物用で下地ボードの張替えが要る程度かどうかで分かれます。タバコのヤニ・臭いは、喫煙で変色や臭いが付いていれば通常の使用を超えると判断されることが多く、喫煙を禁じた物件で吸った場合は用法違反とされています。 国交省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

経年劣化と通常損耗の早見表

耐用年数を過ぎた部位は残存価値が1円(≒0%)になり、借主の負担割合は1円まで下がります。ただし借主は善管注意義務を負うので、故意にクロスへ落書きをした場合など、耐用年数を過ぎていても一定の費用負担を求められることがあります(国交省 参考資料)。

部位耐用年数残存価値(耐用年数超過後)借主負担の計算例
壁紙クロス6年1円入居2年で損傷:残存4年分×損傷割合
カーペット6年1円同上
フローリング部分補修は経過年数を考慮しない/全体を張り替えた場合は建物の耐用年数全体張替えの場合は建物の耐用年数で1円部分補修:経過年数を考慮しない/全体張替え:建物の耐用年数で残存価値1円となる負担割合
畳(表替え)経過年数を考慮しない(消耗品)-故意・過失による毀損は経過年数を考慮せず借主負担
冷暖房機器(エアコン等)6年1円同上
ガス機器(ガスレンジ)6年1円同上
流し台5年1円同上
便器・洗面台等の給排水・衛生設備15年1円同上

給湯器は、国交省の耐用年数の表に行がありません。表にあるのは「ガス機器(ガスレンジ)6年」と「便器・洗面台等の給排水・衛生設備15年」で、給湯器がどちらに当たるかは資料に書かれていません。給湯器の故障が借主負担になるか、年数をいくつで見るかは、契約書と管理会社の見積の考え方で確認してください(配布のエクセルでは、給湯器の耐用年数は入力欄にしてあります)。

原状回復費用の相場

国交省のガイドラインと参考資料は、工事の単価の相場を示していません。参考資料の計算例ではクロスの工事費単価を1㎡あたり1,200円としていますが、「計算例の単価より実際の工事費単価が高いからといって必ずしも不当な請求というわけではありません」とも書いています。金額は物件・地域・業者で変わるので、ここには載せません。見積書は複数の業者から取り、数量・単価・工事の範囲を比べてください。負担の考え方は次のとおりです。

工事内容負担区分の目安
ハウスクリーニング特約が有効に成立していなければ貸主負担(参考資料)
壁紙クロス張替え故意・過失のみ借主負担(耐用年数6年で減額)
フローリング補修故意・過失のみ借主負担(部分補修は経過年数を考慮しない)
畳の表替え通常損耗は貸主負担
設備修理(エアコン・給湯器)故意・過失のみ借主負担

原状回復費用の計算式(国交省ガイドラインの経過年数の考え方)

借主負担額は次の式で算出します。 国交省ガイドライン Q&A及び別表で詳細が示されています。

計算項目計算式具体例
残存価値率 (耐用年数 − 経過年数) ÷ 耐用年数 クロス(耐用6年)入居3年 → (6-3)/6 = 50%
借主負担額 修繕費 × 残存価値率 × 損傷割合 1万円 × 50% × 100% = 5,000円
耐用年数経過後 残存価値1円 借主負担は1円(≒0%)まで下がる。ただし故意の落書きなどは一定の費用負担を求められることがある(参考資料)
入居時に張り替えられていない場合 入居時の経過年数を足す 入居時にクロスが3年たっていれば、入居年数に3年を加えた年数が退去時の経過年数(参考資料)
毀損部分のみ 毀損面積 ÷ 全体面積 1㎡毀損/全20㎡ = 損傷割合5%

裁判例から見る貸主・借主負担の境界

  • 最高裁平成17年12月16日判決:借主に通常損耗の補修費用を負担させるには、少なくとも、負担することになる通常損耗の範囲が契約書の条項自体に具体的に明記されているか、契約書で明らかでない場合は貸主が口頭で説明し、借主がその旨を明確に認識して合意の内容としたと認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要(国交省ガイドラインが引く判旨。 ガイドライン p.7・事例24(p.54・p.90) )

ハウスクリーニング費用の特約や、耐用年数を超えたクロスの負担額は、国土交通省のガイドラインの考え方で整理されています(ガイドラインは判例そのものではありません)。

原状回復義務に関する関連書類比較

書類役割作成時期
入居時チェックリスト入居前の物件状態を双方で確認・写真で記録入居日
退去立会い確認書退去時の損傷箇所と負担区分を双方で合意退去日
原状回復費用査定書業者見積もりと借主負担額の内訳を提示退去後1〜2週間
敷金精算書敷金残額と返還日を明記退去後1ヶ月以内

退去立会いのチェックポイント

立会い前の準備

  • 入居時の写真・動画を確認して損傷前の状態を記録する
  • 契約書の特約事項を確認する(ハウスクリーニング・ペット費用等)
  • 国交省ガイドラインの借主負担・貸主負担の区分を事前に確認する

立会い当日の確認事項

  • 全室の傷・汚れを写真撮影する(タイムスタンプ付き)
  • 設備(エアコン・給湯器・換気扇)の動作確認をする
  • 退去確認書へのサインは内容を十分に読んでから行う
  • 「一切の費用を負担する」「貸主の判断に従う」等の包括的な文言には注意する
  • 不明な点はその場でサインしない権利がある

敷金返還トラブルの対処法

敷金が返還されない場合、以下の手順で対処します。

  1. 書面で請求:内容証明郵便で「敷金返還請求書」を送る
  2. 少額訴訟:訴えの目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求なら使えます。特別の事情がある場合を除き、最初の口頭弁論の期日で審理を終えます(民事訴訟法368条1項・370条1項)。同じ簡易裁判所で同じ年に求められる回数には上限があります
  3. 弁護士相談:示談・交渉または通常訴訟による解決
  4. 消費者センター相談:局番なし188(相談は無料・通話料はかかります)

関連テンプレート

特約で「ハウスクリーニング費用は全額借主負担」とある場合は払う必要がある?
借主に特別の負担を課す特約が有効に成立するには、国交省ガイドラインの3要件(①特約の必要性があり、かつ暴利的でないなど客観的・合理的理由があること②借主が通常の原状回復義務を超える義務を負うことを認識していること③借主が義務負担の意思表示をしていること)を満たす必要があります。最高裁平成17年12月16日判決も、通常損耗の補修費用を借主に負担させるには、負担することになる通常損耗の範囲が契約書の条項自体に具体的に明記されているか、契約書で明らかでなければ貸主が口頭で説明し、借主がその旨を明確に認識して合意の内容としたと認められるなど、特約が明確に合意されていることが必要としています。ハウスクリーニング特約の有効・無効は、借主が負担する内容・範囲が示されているか、通常損耗分まで負担させる趣旨と具体的な範囲が明記または口頭で説明されているか、費用として妥当か、などから判断されます(国交省 再改訂の概要)。入居前に特約内容を確認し、不明点は質問してから署名しましょう。
タバコを吸っていた場合のクロス全張替えは妥当?
喫煙によるヤニ・臭い付着で居室全体のクロスが変色したり臭いが付いたりした場合は、居室全体のクリーニングまたはクロス張替えの費用を借主負担とするのが妥当と考えられています(国交省ガイドライン 別表2)。ただし、クロスの耐用年数は6年で、6年を過ぎると借主の負担割合は1円(≒0%)まで下がります。耐用年数を過ぎていても、故意の落書きなどは一定の費用負担を求められることがあります。費用の妥当性を判断するには、複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。
ペット飼育の場合の追加費用相場は?
ペットが付けた柱やクロスのキズ・臭いは、通常損耗を超えるものとして借主負担になります(国交省ガイドライン 別表1)。費用は損傷の程度や物件の広さで大きく変わるので、見積書の数量・単価で確かめてください。契約書の特約内容(ペット費用の上限等)も必ず確認してください。
修繕費用の見積書が高すぎると感じる場合は?
見積書の内容を確認し、①複数の業者の見積もりと数量・単価を比べる②国交省ガイドラインの計算式で自分で計算する③弁護士・消費者センターに相談する、の順で対処してください。賃貸人には、敷金から差し引く原状回復費用について説明義務があり、借主は明細を請求して説明を求めることができます(国交省 再改訂の概要)。
退去後に追加請求書が届いた場合は?
退去立会い時にサインした確認書の内容と照らし合わせて、追加請求の根拠が正当かどうか確認してください。サインした内容を超える請求や、国交省ガイドラインに反する請求には異議を申し立てることができます。対応に困ったら消費者センター(局番なし188)や弁護士に相談してください。
画鋲・ピンの穴は借主負担?
画鋲・ピン程度の小さな穴は通常損耗として貸主負担になるのが原則です(国交省ガイドライン)。ただし下地ボードの張替えが必要なほど大きい穴(くぎ・ねじによる穴)は借主負担となります。同じ箇所に大量の穴を開けた場合も借主負担となるケースがあります。
入居中に故意でない損傷ができた場合の対応は?
借主の責めに帰することができない事由による損傷は、借主に原状回復義務がありません(民法621条ただし書)。地震で破損したガラスは貸主負担とされています(国交省ガイドライン 別表1)。借主の生活上の不注意(結露の放置によるカビ・水漏れ放置による床腐食等)は善管注意義務違反として借主負担になる可能性があります。発生時に直ちに貸主・管理会社へ通知し、写真・修理見積もりを残しておくと後の責任分担で有利になります。
原状回復の借主負担額に上限はある?
借主負担額は敷金の額とは別に決まり、敷金より多ければ不足分が請求されます。敷金から差し引かれる額は、賃貸人が明細で説明するものです(国交省 再改訂の概要)。納得できない場合は国交省ガイドラインの計算式で借主負担額を試算し、根拠を持って交渉してください。

参考文献・出典

本ページの内容は以下の公的情報源に基づき作成しています(2026-10-12 確認時点)。

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