本記事は2026-05-28時点の情報に基づいています。法令・ガイドラインの最新情報は必ず 公正取引委員会 フリーランス法特設サイトおよび 厚生労働省公式ページで確認してください。 本記事は公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁などの公表資料を出典にした一般情報です。個別の取引判断・契約整備は弁護士にご相談ください。架空の弁護士監修は行っていません。

フリーランス新法とは — 背景・目的・施行日

フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)です。2024年11月1日に施行されました(公正取引委員会 フリーランス法特設サイト 2026-05-28確認)。

この法律が生まれた背景には、フリーランスとして働く人が急増する一方で、業務委託取引における不当な扱いが横行していた実態があります。口頭のみの発注・一方的な報酬カット・成果物のやり直し強要・突然の契約打ち切りなどが慢性化しており、フリーランスは交渉力で大幅に不利な立場に置かれていました。

法律の主な目的は2つです。

  • 取引の適正化: 発注者に書面明示・禁止行為の遵守を義務付ける
  • 就業環境の整備: ハラスメント対策・育児介護配慮の義務を課す
項目 内容
正式名称 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)
施行日 2024年11月1日(令和6年11月1日)
所管機関 公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁(共同所管)
解釈ガイドラインの改正 令和7年10月1日・令和8年10月1日に改正(最新は令和8年10月1日)
法令番号 令和5年法律第25号

出典: 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」・e-Gov法令検索(2026-05-28確認)

対象者:「特定受託事業者」の正式定義

フリーランス新法は、以下の2者の取引に適用されます。

立場 正式名称 定義 具体例
フリーランス(受託側) 特定受託事業者 業務委託の相手方である事業者で、従業員(労働者)を使用しない個人事業主、または代表者1人だけで他に役員がおらず従業員も使用しない法人(一人法人) 個人デザイナー・個人ライター・個人エンジニア・個人コンサルタント・フリー翻訳者・個人カメラマン
発注者(委託側) 業務委託事業者 / 特定業務委託事業者 フリーランスに業務委託する事業者。従業員を使用している場合(週の所定労働時間20時間以上・31日以上の雇用見込みの労働者を1人でも雇っている場合。法人は役員が2人以上いる場合も含む)は「特定業務委託事業者」として義務が強化される 中小企業・スタートアップ・個人事業主(従業員あり)・大企業がフリーランスに発注する場合
重要な判断基準: 「フリーランス(特定受託事業者)」に該当するかどうかは、従業員を使用しているかどうかが唯一の基準です。資本金・売上・業種・副業かどうかは関係ありません。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇う見込みの労働者を1人でも雇っている場合は、特定受託事業者に該当しません(短時間・短期間の一時的な雇用は「従業員を使用」に含みません。同居親族だけを使用している場合も含みません。公正取引委員会 フリーランス法Q&A Q3)。

注意が必要なケース

  • 一人法人(代表者1人だけで他に役員がいない法人): 従業員も使用していなければ特定受託事業者に含まれる(役員が2人以上いる法人は含まれない・法2条1項2号)
  • 個人事業主が別の個人事業主に発注: 発注側も従業員なし個人事業主の場合、「書面明示義務(第3条)」は適用されるが、禁止行為・育児介護配慮等は従業員を使用する発注者のみに適用
  • 副業フリーランス(会社員が副業で業務委託を受ける): 副業側の取引においても本法が適用される。ただし、副業フリーランス自身が従業員を使用していないことが条件

出典: 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト・中小企業庁 フリーランス新法(2026-05-28確認)

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発注者に課される7種類の義務

フリーランス新法が発注事業者に課す義務は、適用条件によって3段階に分かれます。以下の全体マップで自社の状況を確認してください。

義務の種類 適用条件(発注側) 法条文
① 取引条件の書面明示 すべての発注者(従業員の有無を問わず) 第3条
② 報酬の60日以内支払 従業員を使用する発注者(特定業務委託事業者) 第4条
③ 7つの禁止行為の遵守 従業員を使用する発注者・1ヶ月以上の継続委託の場合 第5条
④ 募集情報の的確な表示 従業員を使用する発注者(募集を行う場合) 第12条
⑤ 育児・介護への配慮 従業員を使用する発注者・6ヶ月以上の継続委託の場合 第13条
⑥ ハラスメント防止体制の整備 従業員を使用する発注者 第14条
⑦ 中途解除の30日前予告 従業員を使用する発注者・6ヶ月以上の継続委託の場合 第16条

③ 7つの禁止行為(第5条)の詳細

1ヶ月以上の継続業務委託において、以下の7行為が禁止されています。

禁止行為 具体的なNG例
受領拒否 正当な理由(仕様未達・重大な納期遅延等)なく、納品物の受け取りを拒否する
報酬の減額 フリーランスに責任が無いのに、決めた報酬を後から減らす(前もって合意していても違反。「予算が足りない」は理由にならない)。消費税・地方消費税額相当分を支払わないことも該当例(解釈ガイドライン)
返品 正当な理由なく、受領済みの成果物を返品する
買いたたき 通常の相場より著しく低い対価の設定・強要
購入・利用の強制 業務に不要な商品・ソフトウェア・サービスの購入を要求する
不当な経済上の利益の提供要請 協賛金・接待費・無償作業を一方的に要求する
不当な給付内容の変更・やり直し 合意なく仕様変更・追加作業・修正を強要する

⑦ 中途解除30日前予告の詳細(第16条)

6ヶ月以上の継続的業務委託を中途解除する場合または更新しない場合、原則として30日前までに書面・FAX・メール等で予告する義務があります。予告のあと受託者から求められたら、解除の理由を遅滞なく開示します(法16条2項)。

  • フリーランスの重大な契約違反(守秘義務の重大違反等)がある場合は即時解除が可能
  • 予告なく解除すると、行政の指導・勧告の対象になります(解除の効力や損害賠償は、民事上の争いとして裁判所などが別に判断します。公正取引委員会 フリーランス法Q&A)
  • 口頭での予告は認められない(書面または電磁的方法が必要)

出典: 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(2026-05-28確認)

書面明示義務9項目チェックリスト(テーブル)

フリーランス新法第3条に基づき、業務委託の際に書面または電磁的方法で交付必須の9項目です。1項目でも欠けると義務違反になります。

# 明示事項 記載例 注意点
1 業務委託をした日(交付日) 令和8年6月1日 業務委託をしたら直ちに明示するのが原則(法第3条第1項の文言。内容が定められないことにつき正当な理由がある事項は、定まった後直ちに明示)
2 発注事業者の名称 株式会社〇〇 屋号・法人名を正確に記載
3 受託者(フリーランス)の名称 山田太郎(屋号:△△デザイン) 屋号がある場合は屋号も記載
4 業務の内容 コーポレートサイトリニューアル デザイン制作(トップ1枚・下層9枚) 「デザイン制作」だけでは不十分。具体的な内容・範囲を明記
5 給付受領日または役務提供期間 令和8年7月31日 / 令和8年6月1日〜令和8年7月31日 「納期」「期間」どちらかを具体的に記載
6 給付受領場所または役務提供場所 オンライン(データ納品) / 東京都〇〇区△△ リモート納品の場合は「オンライン」でも可
7 検査完了日(検査を実施する場合) 受領日から7日以内 検査なしの場合は記載不要。「受領=検査完了」も可
8 報酬の額 金350,000円(税別) 税別・税込の区別と消費税率(10%)を明記。「応相談」は不可
9 報酬の支払期日・支払方法 納品・検査完了から30日以内 銀行振込 受領日から60日以内が上限。現金以外の方法を記載
「電磁的方法」での交付も認められます(解釈ガイドライン第2部第1の1(5)イ): 電子メールのほか、第三者が見られないSNS・チャットのメッセージ機能など、送信者が受信者を特定して送れるものが使えます。受託者が内容を確認できる状態になれば到達したものとされます。ガイドラインは、受託者が内容を一括で確認できる形にすることが望ましく、受託者側も自分の端末にファイルとして保存しておくことが望ましいとしています。チャットのみで9項目が揃っていない場合は義務違反です。
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解釈ガイドラインの改正(令和8年10月1日)と実務への影響

解釈ガイドライン「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」は令和6年5月31日に公正取引委員会・厚生労働省が策定し、令和7年10月1日と令和8年10月1日に改正されています。PDFの表紙には「改正:令和7年10月1日 令和8年10月1日」とあり、厚生労働省のページも「改正令和8年10月1日」の版を掲載しています(2026-10-07確認)。

令和8年10月1日の改正については、公正取引委員会が新旧対照表を公表しています。令和7年10月1日の改正の内容は、本記事では確認できていません。

令和8年10月1日改正のポイント1:知的財産権・ノウハウの扱い

公正取引委員会の報道発表(令和8年10月1日)は、知的財産権・ノウハウ・データの取引に関する指針(令和8年6月24日公表)を踏まえ、法の解釈・考え方を更に明確にするための改正としています。新旧対照表では、次の項目で「知的財産権」が「知的財産権等」に改まっています。

項目 改正後の記述(原文)
3条通知の「給付の内容」 「特定受託事業者の知的財産権等(知的財産権及び技術上又は営業上の秘密等(ノウハウを含む。)をいう。以下同じ。)が発生する場合において、…」知的財産権等の譲渡・許諾等を「給付の内容」としないときも、その範囲を明確にすることが望ましい
買いたたき(おそれのある例⑧) 「情報成果物の作成委託において給付の内容に知的財産権等が含まれている場合に、当該知的財産権等の対価について、特定受託事業者と協議することなく、一方的に通常支払われる対価より低い額を定めること。」
不当な経済上の利益の提供要請 特定受託事業者の知的財産権等の譲渡・許諾等を「給付の内容」としないのに無償で譲渡・許諾等させることは、不当な経済上の利益の提供要請に該当する

令和8年10月1日改正のポイント2:不当なやり直しの項目

第5条第2項第2号(不当な給付内容の変更・不当なやり直し)の項目で、改正前の「費用」が「費用・損失」になりました。「特定受託事業者に生じた損失」も、発注者が負担しないと利益を不当に害することになります。

あわせて、次の場合が新たに例に加わりました((オ)⑤)。

「相当の期間にわたり業務委託に係る業務の実施のために特定受託事業者に予定を確保することを余儀なくさせたにもかかわらず、当該業務委託に係る業務の実施直前に当該業務委託を取り消すことにより、業務の実施予定日に、特定受託事業者が別の業務を実施することを不可能にさせた場合」

この場合、発注者が費用・損失の全額を負担せずに、給付内容の変更やり直しを要請することは認められません。

電磁的方法による明示

第3条の明示(3条通知)は、書面または電磁的方法で行います。解釈ガイドラインは、電磁的方法で提供するのに「事前に特定受託事業者の承諾を得る必要はない」としています。受託者は電磁的方法で明示を受けたあとでも、書面の交付を求めることができます(第2部第1の1(6))。9項目が揃っていること、受託者が内容を確認できる状態になっていることが前提です。

  • OK: 受託者の指定するメールアドレスへ、9項目を記載したファイルを添付して送信
  • OK: 第三者が閲覧できないSNS・チャットのメッセージ機能で、9項目を記載して受託者宛てに送信
  • OK: 9項目の一部を掲載したウェブページのURLを、他の項目とあわせてメールで送信
  • NG: 口頭のみ・電話のみ
  • NG: チャットで「よろしく」とだけ送った(9項目が揃っていない)

上の3つのOK例は、ガイドラインが「電子メール等により送信する方法」の例として挙げているものです。受託者が自分のブログやウェブページに書き込めるだけの場所など、特定の受託者宛てに送れないものは電磁的方法に含まれません。

報酬の減額:消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと

第5条第1項第2号が禁止する報酬の減額について、解釈ガイドラインは「減額の名目、方法、金額の多寡を問わず、業務委託後いつの時点で減じても本法違反となる」とし、あらかじめ減額に合意していても、受託者の責めに帰すべき事由がなければ違反としています。「報酬の額を減ずること」に該当する例の1つが「消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと」です(同項第4号の「買いたたき」とは別の禁止行為です)。

インボイスの登録の有無とは書かれていません: 本記事で確認した解釈ガイドラインの本文には、「インボイス」「適格請求書」「免税事業者」の語は出てきません。インボイス未登録を理由に消費税相当額を引くことが、この例にそのまま当たるとガイドラインが書いているわけではありません。消費税の扱いは、あらかじめ双方が合意した契約書に明記し、迷うときは公正取引委員会や弁護士に相談してください。

現場の対応アクション(発注側企業)

  • 既存の発注書・取引条件明示書を見直す: 9項目がすべて揃っているか確認。特に「報酬額の税別・税込明記」「支払期日の60日以内確認」を優先
  • 消費税・地方消費税の扱いを再確認: 合意した報酬から消費税相当額を差し引いていないか確認し、扱いを契約書に明記する
  • 知的財産権・ノウハウの扱いを確認: 成果物の権利や、委託の過程で出てくるノウハウを発注者に渡すなら、その範囲と対価を明示書に書く(令和8年10月1日改正)
  • 社内の発注フローを見直す: 口頭発注・チャットのみの発注が残っている場合は、書面明示(電磁的方法でも可)のフローを整備する

出典: 公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(解釈ガイドライン)」(令和6年5月31日策定、改正 令和7年10月1日・令和8年10月1日)。公正取引委員会 報道発表(令和8年10月1日)・新旧対照表・厚生労働省 フリーランス・事業者間取引適正化等法のページ(2026-10-07確認)

違反時の罰則・指導・公表と申告窓口

フリーランス新法に違反した発注者に対する行政的措置は以下の段階で実施されます。

段階 措置の内容 実施機関
1. 指導・助言 法令遵守に向けた行政指導。多くのケースはまずここから 公正取引委員会・厚生労働省・都道府県
2. 勧告 指導後も改善されない場合。勧告時に事業者名が公表される可能性がある 公正取引委員会・厚生労働省
3. 命令(措置命令) 勧告後も従わない場合に出される法的命令。第2章(取引の適正化)違反は公正取引委員会(法第9条)、第3章(就業環境の整備)違反は厚生労働大臣(法第19条第1項)が出す。厚生労働大臣の勧告の対象は第12条(募集情報の的確な表示)・第14条(ハラスメント対策の措置)・第16条(解除等の予告)等(法第18条)で、このうち第14条に係る勧告に従わない場合だけは命令ではなく公表(法第19条第3項) 公正取引委員会・厚生労働大臣
4. 罰金(50万円以下) 命令違反、報告をしない・虚偽の報告、検査を拒む・妨げるなどの場合(法24条)。法人の場合も対象 —(刑事罰)
5. 過料(20万円以下) ハラスメント対策の措置(第14条)に関する厚生労働大臣の報告の求め(法20条2項)に報告をしない・虚偽の報告をした場合(法26条) —(行政罰)
6. 事業者名の公表 勧告・命令段階での公表。レピュテーションへのダメージ大 公正取引委員会・厚生労働省

令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の行政措置実績(参考)

公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(令和8年6月10日公表)によると、令和7年度の違反被疑事件の処理件数は1,597件で、うち1,552件について勧告または指導の措置が講じられました(勧告10件・指導1,542件)。勧告の対象となった違反行為類型の内訳は、取引条件の明示義務違反10件・期日における報酬支払義務違反9件・報酬の減額1件・不当な経済上の利益の提供要請1件です(1件の勧告事件で複数類型に勧告する場合があるため内訳合計と勧告件数は一致しません)。

フリーランスが申告できる窓口

問題の種類 相談・申告窓口 連絡先
書面未交付・受領拒否・報酬減額等(取引適正化) 公正取引委員会 申出窓口の案内ページ(オンライン申出は厚生労働省の申出受付フォームに集約)
契約・報酬などの相談(弁護士への無料相談) フリーランス・トラブル110番(厚生労働省) 0120-532-110(平日9:30〜16:30・土日祝を除く)
ハラスメント・育児介護配慮(就業環境) 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) 各労働局へ
総合相談 内閣官房 フリーランス相談窓口 内閣官房ページ

書面未交付・受領拒否・報酬減額などの具体的証拠(発注書・チャット・メール・振込明細等)を保全した上で申告することを推奨します。

出典: 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト・内閣官房・厚生労働省(2026-05-28確認)

下請法との違い(比較テーブル)

フリーランス新法と下請法(および2026年1月施行の取適法)はしばしば混同されます。以下の比較テーブルで違いを確認してください。

比較項目 フリーランス新法 下請法(旧来)/ 取適法(2026年1月〜)
正式名称 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 下請代金支払遅延等防止法 / 中小受託取引適正化法(取適法)
施行日 2024年11月1日 下請法: 昭和31年〜 / 取適法: 2026年1月1日
保護対象(受託者) 従業員なしのフリーランス(特定受託事業者) 資本金・従業員数が一定基準以下の中小事業者(フリーランスを含む場合もある)
発注者の条件 業種・資本金・従業員数を問わず適用(従業員有無で義務の範囲が変わる) 委託内容によって資本金3億円超・従業員300人超等の要件あり
支払期日 受領日から60日以内 下請法: 受領日から60日以内 / 取適法: 同様の規制
ハラスメント対策義務 あり(第14条) なし
育児介護配慮義務 あり(6ヶ月以上の継続委託・第13条) なし
中途解除予告義務 あり(6ヶ月以上の継続委託・30日前予告・第16条) なし
両法が競合した場合 フリーランス新法と下請法・取適法は別の法律であり、優先劣後の関係にはない。取引が双方の要件を満たす場合は、両方の義務を遵守する必要がある
「取適法(中小受託取引適正化法)」はフリーランス新法とは別の法律です: 「取適法」は改正後の下請法(中小受託取引適正化法)の通称で、フリーランス新法とは別の法律です。本記事の対象は2024年11月1日施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)です。

出典: 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト・中小企業庁(2026-05-28確認)

フリーランス側の自衛策

フリーランス新法はフリーランスを守るための法律ですが、受動的に保護を待つだけでなく、自ら証拠を保全し申告できる状態を整えることが重要です。

証拠保全の基本(紛争時に備えて)

  • 発注書・取引条件明示書のコピーを保管: 受領した書面・メールはすべて保管する。チャットのスクリーンショットも有効
  • 報酬減額・受領拒否の申し入れが来たら記録: メールやチャットで「〇〇日に〇〇を理由に報酬減額の申し入れがあった」と記録する
  • 業務完了の証拠を残す: 納品メールの送信履歴・納品データのタイムスタンプ・発注者からの受領確認メッセージを保全する
  • 発注者との通話を録音(可能な場合): 重要な交渉・不当要求の通話は録音しておく(録音の合法性は状況による)

契約書ひな型で事前防衛する

フリーランス新法が施行されても、口頭のみ・発注側が用意した不利な契約書のままでは実務上リスクが残ります。自分でフリーランス新法の明示事項を押さえた契約書・取引条件明示書のひな型を持ち、発注時に提示することが最も効果的な自衛策です。

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発注側企業の対応マトリクス

発注側企業がフリーランス新法(および令和8年10月1日改正の解釈ガイドライン)に対応するための、優先度・緊急度別のアクションマトリクスです。

緊急対応(即時着手)

  • 既存の発注書・取引条件明示書の棚卸し: 書面が存在するか・9項目が揃っているか確認
  • 口頭発注フローの廃止: 社内の発注プロセスで書面明示が必要なフローを整備
  • 支払サイトの確認: 受領日から60日を超えている取引先との契約を見直す
  • 消費税相当額を引いていないか見直す: 消費税・地方消費税額相当分を支払わないことは「報酬の減額」の該当例(解釈ガイドライン)

中期対応(3ヶ月以内)

  • 既存契約書の改定: フリーランス新法対応の条項を追加・既存の不適切条項を削除
  • ハラスメント防止体制の整備: 社内のハラスメント対策をフリーランスへの委託関係にも拡張
  • 社内研修の実施: 調達部門・業務委託を行う部門への法律説明研修
  • 6ヶ月以上の継続委託先リストの作成: 育児介護配慮・中途解除予告義務の対象を把握

業種別の重点リスク(発注者の立場別)

業種・発注者タイプ 最も注意すべき義務 典型的な違反リスク
IT・Web(エンジニア・デザイナー委託) 書面明示・禁止行為(仕様変更・やり直し) 「ちょっとした修正」と称した大幅仕様変更
出版・メディア(ライター・イラストレーター委託) 報酬60日以内・買いたたき 掲載中止・没原稿の報酬未払い・著しく低い原稿料
建設(一人親方への委託) 書面明示・中途解除予告 現場都合による急な作業中止・日当のみの口頭委託
EC・小売(物流・梱包の個人委託) 受領拒否禁止・募集情報表示 理由不明の受領拒否・実態と異なる募集条件
コンサル・士業(個人顧問委託) 書面明示・中途解除予告(6ヶ月以上) 継続顧問契約の突然の打ち切り・30日前予告なし
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よくある質問(FAQ)

フリーランス新法の対象は個人事業主全員ですか?
いいえ。従業員(労働者)を使用していない個人事業主、または代表者1人だけで他に役員がおらず従業員も使用しない法人(一人法人)が対象です。「フリーランス(特定受託事業者)」の定義は「業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しないもの」です(法第2条)。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇う見込みの労働者を1人でも雇っている場合は「特定受託事業者」に該当しません(短時間・短期間の一時的な雇用は含みません。公正取引委員会 フリーランス法Q&A Q3)。自分が該当するかどうかは、公正取引委員会 フリーランス法特設サイトで確認することを推奨します。
口頭のみの発注はフリーランス新法違反になりますか?
はい、違反です。フリーランス新法第3条は、業務委託の際に9項目を業務委託をした場合は「直ちに」、書面または電磁的方法(メール・クラウドサービス等)で明示することを義務付けています(条文の文言は「同時に」ではなく「直ちに」です)。口頭のみ・チャットのみ(項目が不完全な場合)は義務違反となります。ただし、電子メールや、第三者が見られないSNS・チャットのメッセージ機能などで受託者を特定して送る方法(電磁的方法)でも明示できます。解釈ガイドラインは、電磁的方法で明示するのに事前に受託者の承諾を得る必要はない、としています(公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」第2部第1の1(5)イ。2026-10-07原文確認)。
海外クライアントからの発注もフリーランス新法の対象ですか?
原則として国内で業務を行うフリーランスへの発注が対象です。外国法人が日本のフリーランスに発注する場合、当該外国法人が「特定業務委託事業者」に該当するかどうかは、その事業者が日本国内で従業員を使用しているかどうかで判断されます。海外在住フリーランスへの国内事業者からの発注については、取引実態・準拠法の合意によって異なるため、個別に弁護士に相談することを推奨します(本情報は一次ソース確認をお勧めします)。
報酬の支払期日(60日以内)の起算日はいつですか?
従業員を使用する発注者(特定業務委託事業者)は、成果物の受領日(または役務の提供を受けた日)から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めます(フリーランス新法第4条)。検査をするかどうかを問わず、起算日は常に「給付を受領した日」です(同条第1項の条文がそう明記しています)。検査完了日は取引条件明示9項目の1つですが、支払期日の起算日ではありません。なお、元委託者から受けた業務を再委託した場合に限り、再委託である旨等を明示していれば「元委託支払期日から起算して30日以内」とすることができます(同条第3項)。取引条件明示書には「支払期日」を具体的に記載する必要があります。
  • 月末締め翌月末払い(月初に受領した分は最長約2か月)→ OK(公正取引委員会は「受領日から60日以内」を「2か月以内」として運用しています。フリーランス法Q&A Q48)
  • 月末締め翌々月15日払い(月初に受領した分は約2か月半)→ NG(2か月を超える)
  • 月末締め翌々月末払い(月初に受領した分は約3か月)→ NG
受領拒否の例外(正当な理由)はありますか?
はい、正当な理由がある場合は受領拒否が認められます。代表的な正当な理由は以下の通りです。
  • 合意した仕様・品質基準を明らかに満たさない成果物である場合
  • 納期に重大な遅延があった場合(軽微な遅延は正当な理由にならない)
  • 発注書に記載した業務内容と著しく異なる内容である場合
一方、「予算が削減された」「担当者が変わった」「方針が変わった」などの発注者側の都合は正当な理由に該当しません。
募集情報(求人)の正確性はどんなルールですか?
フリーランス新法第12条により、募集情報は正確・最新の状態を保つ義務があります。具体的には以下が禁止されています。
  • 実際と異なる報酬額・業務内容の記載
  • 応募締め切りが過ぎた募集の継続掲載
  • 報酬・業務の内容などを欠いて、誤解を生じさせる募集(「報酬は応相談」だけで額の目安が無いものなど。なお「1件1500円~」のような幅のある示し方や、場所の候補を示して「応相談」とすることは可能。フリーランス法Q&A Q90)
クラウドソーシングサービス・仕事依頼サービスを通じた募集も対象です。条件が変わった場合は速やかに更新または取り下げが必要です。
トラブル時の相談窓口はどこですか?
相談先は問題の性質によって異なります。
  • 取引適正化(書面未交付・受領拒否・報酬減額等): 公正取引委員会の申出窓口(申出窓口の案内ページ。オンラインの申出は厚生労働省の申出受付フォームに集約され、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に届きます)。契約・報酬のトラブルの相談は「フリーランス・トラブル110番」(0120-532-110、平日9:30〜16:30)
  • 就業環境(ハラスメント・育児介護配慮): 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
  • フリーランス総合窓口: 内閣官房 フリーランス相談窓口(内閣官房ページ)
書面明示義務違反・報酬減額などの具体的証拠がある場合は保全した上で申告することを推奨します。
解釈ガイドラインは最近どう改正されましたか?
解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)は令和6年5月31日に策定され、その後、令和7年10月1日と令和8年10月1日に改正されています。最新は令和8年10月1日の改正です。令和8年10月1日の改正は、公正取引委員会の報道発表によると、知的財産権・ノウハウ・データの取引に関する指針(令和8年6月24日公表)を踏まえて、法の解釈・考え方をより明確にするものです。新旧対照表で確認できる主な変更は次の2点です。
  • 知的財産権の扱い: 「知的財産権」が「知的財産権等(知的財産権及び技術上又は営業上の秘密等(ノウハウを含む。))」に改まり、3条通知の「給付の内容」、報酬の対価、買いたたき、不当な経済上の利益の提供要請の各項目に反映された
  • 不当なやり直しの項目: やり直しにかかる「費用」が「費用・損失」になり、相当の期間予定を確保させておきながら実施直前に業務委託を取り消し、別の業務を実施できなくさせた場合が、新たに例として加わった
令和7年10月1日の改正の内容は、本記事では確認できていません。(出典: 公正取引委員会 2026-10-01 報道発表「…考え方」の改正について・別紙1-2 新旧対照表、厚生労働省ページ掲載のPDF。2026-10-07原文確認)
本記事は、公正取引委員会(https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/)・厚生労働省・中小企業庁の公式資料(2026-05-28確認)に基づく一般的な情報提供を目的としています。本記事は架空の弁護士・専門家による監修を行っていません。公的な一次情報をもとにした一般情報として提供しています。個別の取引への適用・契約書の法的判断・紛争対応については弁護士等の専門家にご相談ください。

フリーランス新法の相談窓口: 公正取引委員会の申出窓口・厚生労働省 フリーランス・トラブル110番(0120-532-110)・内閣官房 フリーランス相談窓口
主な一次ソース: 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト・厚生労働省・中小企業庁・e-Gov法令検索