インボイス制度とは(2026年時点のおさらい)

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を正確に行うための制度で、2023年10月1日に導入されました。

本記事は一般情報の提供を目的としています。 個別の税務・会計判断は、税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。

消費税の仕入税額控除(受け取った消費税から支払った消費税を差し引く計算)を行うためには、「適格請求書発行事業者」が発行した適格請求書(インボイス)が必要です。

区分 インボイス発行の可否 取引先への影響
課税事業者(登録あり) 発行できる 取引先が全額仕入税額控除を受けられる
免税事業者(登録なし) 発行できない 取引先が仕入税額控除を受けられない(経過措置あり)

出典: 国税庁「適格請求書等保存方式の概要」(2026-05-28確認)

本記事は「2026年に何が変わったか」を主題とします。インボイスの記載方法・書き方については、請求書の書き方 完全ガイド【2026年インボイス対応】をご覧ください。

2026年の主な変更点(令和8年度税制改正)

令和8年度税制改正(2026年施行分)で、インボイス制度に関する重要な変更が3点あります。

変更点 概要 対象
①2割特例の終了 売上税額の2割納付特例が終了 個人:2026年分まで/法人:令和8年9月30日含む事業年度まで
②3割特例の新設 売上税額の3割納付の新特例(時限2年) 個人事業主のみ・2027〜2028年分
③経過措置の見直し 免税事業者からの仕入控除スケジュール変更(延長・70%期間新設) 課税事業者(仕入側)全般

出典: 国税庁「令和8年度税制改正特集」(2026-05-28確認)

①2割特例の終了

2割特例は、免税事業者からインボイス登録をした小規模事業者に対し、「納付する消費税額を売上にかかる消費税の2割にできる」という経過措置でした。

  • 個人事業主:2026年12月31日(2026年分の確定申告)で終了
  • 法人:令和8年9月30日を含む事業年度で終了
2割特例終了後は、本則課税・簡易課税・3割特例(個人のみ)の中から適用を検討する必要があります。

②3割特例の新設(個人事業主限定・2027〜2028年分)

2割特例の後継として、個人事業主向けに「3割特例」が新設されました。

項目 内容
対象者 個人事業主のみ(法人は対象外)
要件 インボイス発行事業者であること・基準期間の課税売上高が1,000万円以下
効果 売上にかかる消費税の30%を納付すればよい(実質70%減)
適用期間 2027年分・2028年分(2年間限定)
手続き 事前届出不要。確定申告書に「本特例の適用を受ける旨」を記載するだけ
3割特例は2028年分で終了します。2029年分以降は本則課税か簡易課税を選択する必要があります。なお、3割特例の終了後に簡易課税を選択する場合、届出の提出期限が緩和される予定です(国税庁・令和8年度改正 2026-05-28確認)。

仕入税額控除の経過措置スケジュール(改正後)

課税事業者が免税事業者(インボイス未登録)から仕入れを行った場合に受けられる仕入税額控除の割合は、令和8年度改正で以下のスケジュールとなりました。

期間 控除可能割合 備考
〜2026年9月30日 80% インボイス制度開始(2023年10月)〜当初経過措置
2026年10月1日〜2028年9月30日 70% 令和8年度改正で新設(2年間)
2028年10月1日〜2030年9月30日 50% 令和8年度改正で2年延長
2030年10月1日〜2031年9月30日 30% 令和8年度改正で2年延長
2031年10月1日〜 0%(経過措置終了) 免税事業者からの仕入れに対する控除なし

出典: 起業の「わからない」を「できる」に「仕入税額控除の経過措置延長解説」(2026-05-28確認)・国税庁令和8年度税制改正

重要: 令和8年度改正前は2026年10月から80%→50%へ直接引き下げられる予定でした。改正により70%期間(2年間)が新設され、終了時期も2031年9月まで後ろ倒しになりました。競合サイトの多くがこの改正を反映していない点に注意してください。

仕入金額ごとの負担変化(試算)

免税事業者への支払いが月100万円(消費税10万円)の場合、控除できなくなる額の変化は以下のとおりです。

期間 控除率 控除できる額(月) 控除できない額(月)
〜2026年9月 80% 8万円 2万円
2026年10月〜2028年9月 70% 7万円 3万円
2028年10月〜2030年9月 50% 5万円 5万円
2031年10月〜 0% 0円 10万円

消費税額の計算はkeisan-naviの無料ツールでご確認いただけます(後述)。

免税事業者は登録すべきか?判断フロー

インボイス登録の要否は「取引先の大半が課税事業者かどうか」が最大の分岐点です。

インボイス登録が有利になりやすいケース

  • 取引先(発注元)の大半が法人や課税事業者の個人事業主(B2B取引)
  • 取引先から「インボイス登録を求められている」または「登録がないと単価を下げると言われた」
  • 売上が拡大傾向で、いずれ課税事業者になる見込みがある
  • 消費税の仕入れが少なく、2割特例・3割特例の恩恵が大きい時期に登録しておきたい

免税事業者のままでいることが選択肢になるケース

  • 取引先の大半が一般消費者(BtoC)で、インボイスを要求されない
  • 売上が1,000万円以下で課税事業者になる必要がない
  • 登録することで消費税の申告・納税コストが収益を圧迫する
免税事業者のまま取引を続ける場合、取引先の仕入税額控除割合は2031年10月以降はゼロになります。経過措置の期間中に取引先との交渉・価格調整を検討しておくことを推奨します。

判断チェックリスト

  • 取引先の8割以上が法人または課税事業者か確認した
  • 現在の売上規模(年間)と2割特例・3割特例の適用可否を確認した
  • 登録した場合の消費税申告・納税額を試算した
  • 簡易課税(みなし仕入率)の適用可否・節税効果を確認した
  • 取引先から登録の有無について確認されているか確認した
個別の登録判断は税理士等の専門家に相談することを強くお勧めします。 売上規模・業種・取引先の構成によって最適解は異なります。

インボイス登録を取り消す方法と注意点

一度登録したインボイス番号(適格請求書発行事業者の登録)は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出することで取り消せます。

手続き方法

  1. e-Taxまたは書面で届出書を作成
    国税庁のインボイス登録センターへ、e-Tax(e-Taxソフト等)または書面郵送で提出します。
  2. 提出期限:取り消したい課税期間の初日から15日前まで
    個人事業主が2027年1月1日から取り消したい場合、2026年12月17日が期限です。
  3. 効力発生:届出を提出した課税期間の「翌」課税期間の初日から
    提出した年の課税期間中は引き続き適格請求書を発行できます。
注意: 登録を取り消しても「課税事業者選択届出書」を提出している場合は課税事業者のままです。免税事業者に戻るためには「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出が別途必要な場合があります。詳細は税務署または税理士にご確認ください。

参照: マネーフォワード クラウド請求書「インボイス制度の廃止手続き」(2026-05-28確認)・国税庁「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」(2026-05-28確認)

簡易課税との比較と選択のポイント

2割特例・3割特例が終了した後の主な選択肢は「本則課税」か「簡易課税」です。

方式 計算方法 メリット デメリット・注意点
本則課税 売上消費税 − 仕入消費税(実額) 仕入れが多い業種は税負担が小さくなる 仕入税額控除の証跡管理(インボイス保存)が必要
簡易課税 売上消費税 × (1 − みなし仕入率) 仕入れの管理不要。みなし仕入率が実態より高ければ節税 基準期間の課税売上高5,000万円以下の事業者のみ選択可能。選択後2年間は変更不可

簡易課税のみなし仕入率(業種別)

事業区分 対象業種(例) みなし仕入率
第1種 卸売業 90%
第2種 小売業 80%
第3種 製造業・建設業・農業・漁業等 70%
第4種 飲食店業・その他(第1〜3・5・6種以外) 60%
第5種 サービス業(運輸・通信・金融・保険・情報通信等) 50%
第6種 不動産業 40%

出典: 国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分」(2026-05-28確認)

簡易課税を選択するには「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用を受けようとする課税期間の前課税期間中に提出する必要があります。2割特例・3割特例の終了後に簡易課税に切り替えたい場合は、届出の期限に注意してください。

消費税の計算は無料ツールで確認する

本則課税と簡易課税の比較試算、インボイスの消費税計算は、keisan-naviの無料ツールでご確認いただけます。登録不要・ブラウザだけで使えます。

よくある質問(FAQ)

インボイス制度とは何ですか?ひと言で教えてください。
「誰が消費税を正確に納めているか」を伝票で証明し合う仕組みです。2023年10月に導入されました。消費税の仕入税額控除を受けるためには、インボイス登録番号(T+13桁)が記載された適格請求書(インボイス)を受け取る必要があります。インボイスを発行できるのは税務署に登録した「適格請求書発行事業者」のみです(国税庁 2026-05-28確認)。
2割特例はいつ終了しましたか?法人と個人で違いますか?
2割特例の終了時期は法人と個人で異なります。法人は令和8年9月30日を含む事業年度まで適用可能です。個人事業主は令和8年(2026年)12月31日(2026年分の確定申告)まで適用可能です。2割特例は「売上にかかる消費税の2割を納付すればよい」という特例で、免税事業者からインボイス登録した小規模事業者が対象でした(国税庁・令和8年度税制改正 2026-05-28確認)。
2割特例終了後は何を選べばよいですか?
「本則課税」「簡易課税」「3割特例(個人事業主のみ)」の3択です。個人事業主で基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は3割特例(2027〜2028年分の2年間)を検討できます。その後は簡易課税か本則課税を選択します。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択可能で、みなし仕入率で消費税を計算します。個別の選択判断は税理士等の専門家にご相談ください。
免税事業者のままでいると何が変わりますか?
取引先(課税事業者)が受け取れる仕入税額控除が段階的に縮小します。2026年9月まで免税事業者からの仕入れは80%控除可能でしたが、2026年10月以降は70%(2028年10月以降は50%、2030年10月以降は30%、2031年10月以降は0%)へ段階的に引き下げられます(令和8年度税制改正)。取引先によっては「価格交渉」や「取引見直し」を求められる可能性があります。自身の事業規模・業種・取引先の構成を踏まえて判断が必要です。
3割特例とはどのような制度ですか?対象は誰ですか?
3割特例とは、売上にかかる消費税の30%を納付すればよい個人事業主向けの時限措置です。適用対象は①個人事業主であること(法人は対象外)②インボイス発行事業者であること③基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること、の3要件を満たす方です。適用できる期間は2027年分・2028年分の2年間のみです。事前の届出は不要で、確定申告書に適用する旨を記載するだけです(令和8年度税制改正・2026-05-28確認)。
インボイス登録を取り消す(やめる)ことはできますか?手続きは?
はい、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を税務署に提出することで取り消せます。ただし、取消の効力は「届出を提出した課税期間の翌課税期間の初日」から生じます。個人事業主が2027年1月1日から登録を取り消したい場合は、2026年12月17日(2027年1月1日の15日前)までに提出が必要です。登録を取り消しても課税事業者選択の届出をしている場合は引き続き課税事業者となることがあります。詳細は国税庁または税理士に確認してください。
簡易課税制度とは何ですか?みなし仕入率はいくらですか?
簡易課税制度は、実際の仕入れ額を集計せず「みなし仕入率」で消費税を計算できる制度です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できます。みなし仕入率は事業区分ごとに異なります。第1種(卸売業):90%、第2種(小売業):80%、第3種(製造業・建設業等):70%、第4種(飲食業等):60%、第5種(サービス業等):50%、第6種(不動産業):40%です(国税庁 No.6509 2026-05-28確認)。
インボイス番号(登録番号)はどこで確認できますか?
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号・氏名・登録日を無料で検索できます。URLは https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/ です(2026-05-28確認)。取引先のインボイス番号が有効かどうか受領前に確認する際に使います。
フリーランスはインボイス登録をした方がいいですか?
取引先(発注元)の大半が課税事業者かどうかが判断の分岐点です。法人や課税事業者の個人事業主を主な取引先とする場合、インボイス未登録では取引先の税負担が増えるため、登録を求められることがあります。一方、一般消費者(BtoC)が主な取引先の場合、インボイスの必要性は低くなります。また、登録すると消費税の申告・納税義務が発生します。2割特例・3割特例・簡易課税の適用可否を含めて、税理士等の専門家への相談をお勧めします。本記事は一般情報の提供を目的としており、個別の判断は税理士等専門家にご相談ください。