退職後の手続き全体像(期限別一覧表)

退職後は複数の公的手続きが同時に発生します。 最短で退職翌日から14日・20日という厳しい法定期限があるため、 退職前から段取りを把握しておくことが重要です。

以下の一覧表は2026-05-28時点の情報です。 手続きの内容・期限は制度改正により変わることがあります。 個別の状況については市区町村・ハローワーク・年金事務所にご確認ください。

手続き 期限 窓口 必要書類(主なもの)
国民年金への切替 退職翌日から14日以内 市区町村役場 / 年金事務所 / マイナポータル 基礎年金番号通知書・マイナンバーカード・退職証明書等
国民健康保険への加入 退職翌日から14日以内 市区町村役場 健康保険資格喪失証明書・マイナンバーカード
健康保険 任意継続 退職翌日から20日以内 協会けんぽ / 健保組合 任意継続被保険者資格取得申出書
失業給付(雇用保険)申請 離職票受取後すぐ(受給期間は離職翌日から1年間) 居住地のハローワーク 離職票・マイナンバーカード・写真・印鑑・通帳
住民税の普通徴収切替 会社が自動で切替。6月以降に納付書が届く 市区町村(自動) 特になし(納付書が届く)
確定申告(必要な場合) 翌年2月16日〜3月15日 税務署 / e-Tax 源泉徴収票・各種控除証明書
退職所得申告書提出(退職金がある場合) 退職金受取前まで 勤務先 退職所得の受給に関する申告書

出典: ハローワーク「基本手当について」(2026-05-28確認)、 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」(2026-05-28確認)

本記事は一般情報の提供を目的としています。 個別の保険料計算・税額・給付額は、居住地・収入・世帯構成等によって異なります。 最終的な判断は市区町村・ハローワーク・年金事務所・税務署・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
FREE TEMPLATE
退職届・退職願テンプレート(無料)
Word / PDF 対応。記入例付きで即使える

①健康保険:任意継続 vs 国保 vs 扶養 どれを選ぶ?

会社員は在職中、会社の健康保険(協会けんぽ等)に加入しています。 退職すると翌日に資格を喪失するため、14〜20日以内に次の健康保険を選ぶ必要があります。 選択肢は3つです。

3つの選択肢の比較

種別 特徴 期限 こんな人に向いている
任意継続 在職中の保険を最長2年間継続。保険料は全額自己負担(上限あり)。2年間保険料が固定。 退職後20日以内 前職の年収が高い・扶養家族が多い・保険料を早めに確定させたい人
国民健康保険(国保) 市区町村が運営。前年所得をもとに保険料を計算。失業後2年目から保険料が下がりやすい。 退職後14日以内 前職の年収が低〜中程度・扶養家族がいない・翌年から収入が大幅減の人
家族の扶養に入る 配偶者や親の健保の被扶養者になる。保険料は追加負担なし(無料)。 被扶養者認定後すぐ 被扶養者認定を受けられる収入要件(今後の年収見込み130万円未満等)を満たす人
任意継続の注意点: 2026年4月より協会けんぽの保険料率(医療分)は全国平均9.90%に変更され、 子ども・子育て支援金(0.23%)が新設・上乗せされています。 任意継続を選ぶ場合は、最新の保険料を協会けんぽ公式サイトで確認してください (協会けんぽ公式 2026-05-28確認)。

国保 vs 任意継続:保険料の目安(年収・世帯別)

保険料は年収・家族構成・居住する自治体によって大きく異なります。 下表は概算目安です。正確な試算には各市区町村の窓口または以下の計算ツールを使ってください。

前職年収(退職前) 任意継続(月額概算) 国保(月額概算・単身・東京23区平均) 目安
300万円 約1.5万円〜 約2.0万円〜 任意継続が有利なケース多
400万円 約2.2万円〜 約2.6万円〜 年収・自治体による
500万円 約2.8万円〜(上限付近) 約3.2万円〜 任意継続が有利なケース多
600万円〜 約3.0万円前後(上限) 約4.0万円〜 任意継続が有利なケース多

※上記は概算目安であり、実際の保険料は年収・世帯構成・居住市区町村により異なります。 2026年4月改定後の協会けんぽ料率・自治体の国保料率をもとに算出。

会社都合退職の場合:国保料の軽減措置

倒産・解雇・雇い止め等の会社都合退職(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合、 国民健康保険料が最大で前年給与所得の30%(7割減)で算定される軽減措置があります。 窓口で「特定受給資格者・特定理由離職者の国保軽減」を申し出て、 ハローワークが発行する「雇用保険受給資格者証」を提示してください。

出典: 厚生労働省「非自発的失業者に係る国民健康保険料(税)の軽減措置の創設について」(2026-05-28確認)

②国民年金:第1号被保険者への切替と免除申請

会社員は厚生年金の第2号被保険者ですが、退職すると国民年金の第1号被保険者に切り替わります。 切替は退職翌日から14日以内が原則です(日本年金機構)。

国民年金切替の手続き手順

  1. 手続き先を確認する 住所地の市区町村役場(国民年金担当窓口)または年金事務所。 マイナポータルを使ったオンライン申請も可能(24時間受付)。
  2. 必要書類を準備する 年金手帳または基礎年金番号通知書・マイナンバーカード・退職日確認書類(離職票 / 退職証明書 / 健康保険資格喪失証明書のいずれか)
  3. 窓口で「第1号被保険者への種別変更届」を提出する 窓口での手続きはおおよそ15〜30分程度。
  4. 免除・猶予を申請する場合 収入が大幅に減少する場合は同時に「国民年金保険料の免除・猶予申請」を提出できます。 会社都合退職の場合は「特例免除(所得要件が緩和)」の対象になります。

2026年時点の国民年金保険料

年度 月額保険料 付加年金(任意加入)
2026年(令和8年) 17,510円 +400円/月(老齢基礎年金に上乗せ)

出典: 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」(2026-05-28確認)

配偶者がいる場合は、配偶者も同時に第3号から第1号への切替が必要になります。 転職先の厚生年金に加入した場合は再度切り替え手続きが必要です。 配偶者の扶養に入る場合は第3号の手続きを配偶者の勤務先経由で行います。

③雇用保険:失業給付の申請手順と受給額の目安

失業給付(基本手当)は、就職する意思と能力があるにもかかわらず仕事に就けない状態を支援する制度です。 受給するには以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • 離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上ある (会社都合・特定理由離職者は離職前1年間に6か月以上
  • ハローワークで求職申込みを行い、積極的に就職活動をしている状態

給付日数の目安(2026年時点)

退職理由 被保険者期間 給付日数(年齢別)
自己都合退職 1年未満〜10年未満 90日
10年以上〜20年未満 120日
20年以上 150日
会社都合退職(特定受給資格者)45歳未満 1年未満 90日
5年以上〜10年未満 180日
10年以上〜20年未満 240日

出典: ハローワーク「基本手当について」(2026-05-28確認)

基本手当日額の上限(令和7年8月1日現在)

年齢区分 基本手当日額(上限)
30歳未満 7,255円
30歳以上45歳未満 8,055円
45歳以上60歳未満 8,870円
60歳以上65歳未満 7,623円

出典: ハローワーク「基本手当について」(令和7年8月1日改定・2026-05-28確認)。 基本手当日額は離職前6か月の賃金合計÷180で算出した賃金日額の約50〜80%(60〜64歳は45〜80%)です。

失業給付の申請ステップ

  1. 離職票を受け取る(退職後10日前後) 会社が発行し、ハローワーク経由で届きます。届かない場合は会社に催促してください。
  2. ハローワークで求職申込み・受給資格の申請 離職票・マイナンバーカード・証明写真2枚・印鑑・通帳を持参して窓口で手続き。
  3. 7日間の待機期間 申請後7日間は「失業状態」として待機。この期間はアルバイト不可。
  4. 給付制限(自己都合退職の場合) 自己都合退職では待機後に2か月の給付制限があります (2025年10月1日以降の離職者から3か月→2か月に短縮)。 会社都合・特定受給資格者は給付制限なし。
  5. 認定日ごとにハローワークへ出頭・求職活動の報告 4週間ごとに認定日が設定されます。求職活動2回以上の実績が必要です。
  6. 給付金の振込 認定日の約1週間後に指定口座へ振込。
失業給付を受けながら転職活動する際の注意: アルバイト・副業をする場合は必ず認定日に申告してください。 申告漏れは給付の取消・返還・3倍ペナルティの対象となります(雇用保険法第10条の4)。

④住民税・確定申告:退職後の税金で注意すること

住民税の「特別徴収→普通徴収」切替

在職中は毎月の給与から住民税が天引き(特別徴収)されています。 退職すると市区町村が普通徴収に切り替え、年4回払いの納付書が届く仕組みです。

退職時期 住民税の扱い
1月〜5月退職 退職時の最終給与または退職金から残額を一括控除(一括徴収)されるケースが多い
6月〜12月退職 退職月以降は普通徴収に切り替わり、市区町村から納付書が送られる
「退職翌年の住民税」に要注意: 住民税は前年の所得をもとに翌年課税されます。 退職した年(収入が多かった年)の翌年6月頃に高額の納付書が届くため、 資金を準備しておく必要があります。 退職翌年に収入が大幅減になった場合は2年目から保険料が下がります。

確定申告が必要・有利になるケース

  • 年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合(年末調整を受けられないため) → 源泉徴収されすぎた所得税が還付されることが多い
  • 退職金を受け取ったが「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合 → 一律20.42%源泉徴収されるため、申告することで税額を精算できる
  • 失業給付の受給中に副業収入があった場合 → 失業給付自体は課税対象外だが、副業所得が20万円を超える場合は申告必要
  • 医療費控除・住宅ローン控除・ふるさと納税(ワンストップ制度不使用)等を受けたい場合

出典: 国税庁「確定申告が必要な方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm(2026-05-28確認)

退職後に独立・開業する場合は、確定申告に加えて青色申告の申請(開業日から2か月以内)を 税務署に提出すると節税メリットが大きくなります。 会計ソフトを早期に導入しておくと帳簿管理が楽になります。

⑤書類の受取と返却チェックリスト

退職時に会社から受け取るべき書類

  • 雇用保険被保険者証(ハローワーク失業申請に使用)
  • 離職票(ハローワーク失業申請に使用。退職後10日前後に届く)
  • 源泉徴収票(確定申告・転職先の年末調整に使用)
  • 退職証明書(転職先・健保・年金切替等に使用。請求が必要な場合あり)
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書(紛失の場合は年金事務所で再発行)
  • 健康保険資格喪失証明書(国保加入手続きに使用)

会社への返却物チェックリスト

  • 社員証・入館証・社員バッジ
  • 会社貸与のパソコン・スマートフォン・タブレット
  • 名刺(未使用分)
  • 制服・作業着(指定がある場合)
  • 健康保険証(資格喪失後は速やかに返却)
  • 会社のクレジットカード・交通系ICカード
FREE TEMPLATE
退職証明書・その他労務テンプレート
退職証明書・労働条件通知書等が無料でDL可能

退職理由別(転職決定済/未定/独立)の手続き分岐

退職後の手続きは次のステップによって優先順位が変わります。 以下の3パターンで確認してください。

パターン①:転職先が決定済み(空白期間なし)

手続き 対応
健康保険 転職先の社会保険に即加入。空白期間がなければ国保・任意継続は不要。
年金 転職先で厚生年金加入手続き。自分での切替は原則不要。
失業給付 就職済みのため受給不可。
確定申告 転職先で年末調整が可能(前職の源泉徴収票を転職先に提出)。
住民税 転職先で特別徴収継続。手続き不要。

パターン②:転職先未定(求職活動中)

  • 健康保険: 国保 or 任意継続を20日以内に選択
  • 年金: 国民年金第1号へ切替(14日以内)・収入が無い場合は免除申請も検討
  • 失業給付: ハローワークで申請(12か月以上の被保険者期間が必要)
  • 住民税: 普通徴収の納付書が届く。翌年の保険料は低下する見込み
  • 確定申告: 年内に再就職できない場合は翌年2〜3月に実施

パターン③:独立・フリーランス・開業

  • 健康保険: 国保加入が基本(扶養に入れる場合を除く)
  • 年金: 国民年金第1号へ切替。iDeCoや付加年金の追加加入も検討
  • 失業給付: 開業予定の場合は受給できない可能性あり(「就職」とみなされるため)。ハローワークで相談
  • 税務署: 開業届(開業後1か月以内)・青色申告申請書(開業後2か月以内)を提出
  • 会計ソフト: freee / マネーフォワード クラウド等の導入を推奨

よくある質問(FAQ)

退職後にやる手続きの優先順位は?
最も期限が短い手続きから先に動くことが原則です。健康保険・国民年金の切替は退職翌日から14日以内(任意継続は20日以内)が法定期限です。失業給付の申請はハローワークへ離職票が届いてから手続きできるため、離職票を受け取り次第すぐ動くのがポイントです。住民税・確定申告は期限が長めですが、早めに把握しておくと資金計画が立てやすくなります。
健康保険の任意継続と国民健康保険はどちらが安いですか?
一概にどちらが安いとは言えません。任意継続は退職前2年間の標準報酬月額をもとに計算(上限あり)され、2年間保険料が変わらないのが特徴です。国民健康保険は前年の所得をもとに計算するため、退職翌年は保険料が下がる傾向があります。扶養家族がいる場合は任意継続が有利になることが多いです(扶養家族は保険料無料)。保険料の詳しい試算は、keisan-navi の国保料シミュレーターで試算できます(2026-05-28確認)。
失業給付はいつからもらえますか?
自己都合退職の場合、ハローワークで求職申込みをした後「7日間の待機期間+2か月の給付制限」を経て受給開始になります(2025年10月以降の離職者。以前は3か月)。会社都合退職(特定受給資格者)は給付制限なし・7日間の待機後に受給開始です。受給額の目安はkeisan-navi の失業手当計算ツールで確認できます(2026-05-28確認)。
退職後の住民税はいくら払えばよいですか?
退職後の住民税は「前年の所得」をもとに計算されます。在職中は給与から毎月天引き(特別徴収)されていましたが、退職後は市区町村から送られる納付書で自分で支払う「普通徴収」に切り替わります。1月〜5月退職の場合は退職時の最終給与から残額が一括控除されるケースが多いです。翌年6月からは「退職後の収入が少ない年分」の住民税が適用されるため、2年目は大幅に下がります。詳しくはkeisan-navi 住民税シミュレーターで試算してください。
離職票と退職証明書の違いは何ですか?
離職票はハローワークが発行を許可した書類で、失業給付の申請に使います。退職後10日前後に会社経由で届きます。一方、退職証明書は会社が発行する私的書類で、転職先への在職事実証明や健保・年金の切替手続きに使います。いずれも重要書類です。退職証明書のテンプレートは退職証明書テンプレート(無料)からダウンロードできます。
退職後に確定申告は必要ですか?
以下のケースでは確定申告が必要または有利になります。①年の途中で退職し年内に再就職しなかった場合(年末調整を受けられないため)、②退職金が支払われた場合(「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない場合)、③失業給付を受けている場合(原則として課税対象外・申告不要だが副業収入等がある場合は必要)、④医療費控除・住宅ローン控除等を受けたい場合。確定申告の期間は原則として翌年2月16日〜3月15日です(令和8年分は2027年2月・3月)。
退職後に転職先が決まっていない場合、年金保険料の免除・猶予を受けられますか?
はい。収入が減少した場合、国民年金保険料の「免除・納付猶予」申請ができます。免除が承認されると保険料の全額・4分の3・2分の1・4分の1のいずれかが免除されます(老齢基礎年金の受取額は減額)。会社都合退職(特定受給者)は所得要件が緩和される「特例免除」の対象です。申請は市区町村窓口または日本年金機構の窓口で行います(日本年金機構公式 2026-05-28確認)。
退職届と退職願・辞表の違いは何ですか?
退職届は「退職の意思を一方的に通知する」書類、退職願は「退職を申し出る」書類で、会社の承認が前提です。辞表は主に役員・公務員が使う表現です。一般社員が会社に提出するのは「退職届」または「退職願」のいずれかが多いです。書き方のテンプレートは退職届・退職願テンプレート(無料)からダウンロードできます(Word / PDF 対応)。
会社が退職を認めてくれない・ハラスメントがある場合は?
民法627条により、期間の定めのない雇用契約では「退職を申し出てから2週間後に雇用契約は解除される」と規定されています。会社の同意は法律上不要です。ただし、直接交渉が困難な場合やハラスメント・未払い残業代の問題がある場合は、退職代行サービス(労働組合運営)や弁護士への相談も選択肢です。
免責事項: 本記事は2026-05-28時点の一般情報を提供することを目的としており、 個別の法律・税務・社会保険上のアドバイスを提供するものではありません。 手続きの詳細・個別の判断は、市区町村・ハローワーク・年金事務所・税務署・ 社会保険労務士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。